2012年10月、11月、12月分の日記です。
2012年10月3日、水曜日
見る、眼の誕生は私たちをどう変えたかの本"
ロンドン在住のサイエンスライター、サイモン・イングスさんの著書「見る、眼の誕生は私たちをどう変えたか」を読みました。
人間はどうやってものを見ているのか。この謎に、これまで多くの科学者が取り組んできました。本書では”眼”については、生物学的な眼の機能、進化のプロセスと歴史、種ごとの違いなどに言及し、”見ること”については、知覚と認知、その歴史について解説し、眼と見ることのすべてを総合的に語った内容になっています。
人間の網膜は脳を外から観察できる組織ですが、網膜には1億2600万個の光受容体があり、これに対して視神経の繊維は100万程度です。もし、すべての光受容体が神経線維によって脳と結ばれていたら、視神経は眼球と同じくらいの厚みになるといいます。網膜から入る情報がメリハリの効いたものであれば情報は少なくて済み、上手に編集された100万の信号のほうが、混沌と化した1億2600万の情報より優れているというわけです。このあたりはコンピュータに置き換えて考えるとIDEとSATAのようなデータ転送にかかわる関係と似ていると思いました。
網膜には二つの視覚メカニズムが備わっており、一つは夜間用、一つは昼間用です。夜間用はほんの小さな光でも収集、記録されますが鮮明には見えない。できるイメージが粗くなるという感じです。ところが昼間の視覚では、視野の中心の情報が優先され、網膜表面のわずか0.5%しかない中心窩が生み出す情報は、脳の第一次視覚野が受け取る情報の40%を占めるという事実には驚きました。
人間に眼があることの由来と意義を考えさせられる一冊でした。

2012年10月6日、土曜日
マクドナルドのメニューボード"
今月からマクドナルドのレジカウンターの上に置いてあったメニュー表がなくなりました。
その理由は、レジカウンターに並んでいる間に、レジカウンターの上方に設置されたメニューボードと呼ばれるパネルを見てオーダーする商品を決めてもらい、レジではオーダーを伝えるだけにすれば、待ち時間が短縮でき、お客さんが並んで待つ時間のストレスを減らすことができるからだそうです。
確かに、レジで商品の選択に悩む人を減らすことで、待ち時間の短縮は期待できると思います。でも、それでは視覚や聴覚に障害のある人や高齢者などが利用しにくくなるのではないでしょうか。
これまでのレジのメニュー表とメニューボードを併用するとか、目の高さと同じ低い位置に、コントラストに配慮した大きな字で表記したメニューをメニューボードとは別に設置しておくことで、同様の効果は期待できるのではないでしょうか。
こういったことを専門に研究している学者もいますが、実際の生活にちっとも役立っていないと感じます。

2012年10月7日、日曜日
映画アウトレイジビヨンドのチラシ"
北野武監督、主演作品「アウトレイジ・ビヨンド」を観ました。ヤクザ同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」の続編です。
関東最大の組織暴力団山王会の抗争から5年。さらに巨大化して政界進出など勢力拡大を進める山王会に対し、目に余ると判断した警察は、組織の弱体化を図るため動き始めます。そこで関西の組織暴力団花菱会に目をつけた警察は、東西の暴力団同士で殺し合いをさせようと陰謀を企てます。
そこに5年前、山王会の抗争で捕まり、刑務所の中で対立していたヤクザに刺され死んだはずの、ビートたけし演じる山王会系暴力団大友組組長、大友が実は生きていたという事実が持ち出され、突然出所を告げられます。ここから、大友を中心に、二つの巨大ヤクザ組織と警察の三つ巴の謀略と裏切り、血と痛みにまみれた抗争劇が描かれていきます。
この作品はヤクザ社会を描いてはいますが、いわゆる任侠映画ではない、もっと現代的な乾いた感じのする作品です。前作同様、本質的な欲望を心の底に持ちながら、それを見せずに自分の野望に向かっていく、野心あふれる男たちの姿は格好よく、バイオレンスシーンは控えめで、エンターテイメントに徹したストーリー展開の面白さは、女性にもウケるのではないかと思います。
ただ、これまでの北野作品とは違い、詩の世界を映像にしたような緊張感があまり感じられず、説明のようなセリフが多くなったような気がしました。
ヤクザも会社も病院も、おおよそ組織があるところ、この映画のストーリーのような争いはあるし、そういう意味では、世の中、全員悪人なのかも知れません。

2012年10月13日、土曜日
コンビニのタバコのショーケース"
禁煙を始めて2年が過ぎました。吸いたい欲求は完全に消えないものの、吸える場所を探して右往左往する苦労がなくなり、禁煙してよかったと思えるようになりました。
日本の喫煙率は現在、男性32.2%、女性8.4%、男女平均19.5%で、このまま喫煙率の下降傾向が続いたとすると2022年には男女平均15.1%になると予測されています。しかし、政府はこれよりさらに低い12.2%以下を目標値として設定しており、本年2月に開かれた日本禁煙推進医師歯科医師連盟の学会シンポジウムでは、各種禁煙補助剤の活用、職場での禁煙支援、薬剤師による無料の電話禁煙相談の創設などが提言されました。
これに呼応するように新潟県魚沼市では、今月より受動喫煙防止を目的に、罰則はないものの市役所庁舎や公民館など市の建物と敷地内を全面禁煙としました。さらに指定管理者が運営する日帰り入浴施設やスキー場などにも協力を求めるとしています。田舎にもきびしいタバコ包囲網が張りめぐらされてきた感じがします。
識者の間では”禁煙ファシズム”なんていう言葉も使われるようですが、政府が個人の健康に関与し過ぎるのは、ちょっと怖いです。

2012年10月17日、水曜日
長岡市役所こしじ支所"
10月21日投開票の新潟県知事選挙の期日前投票に行って来ました。
現職で無所属の泉田裕彦さん(50才)、新人で日本共産党県委員長の樋渡士自夫さん(59才)、新人でスマイルセラピー協会長のマック赤坂さん(64才)の3人で争われる今回の選挙は、主な争点として上越沖のメタンハイドレートなどエネルギー資源の活用、柏崎刈羽原発を含む原発の是非、北陸新幹線と並行在来線への対応、医師不足解消のための医学部新設問題などが挙げられます。
前回、平成20年の投票率は46.49パーセントでしたが、今回は40パーセントを割ってしまう恐れもあるとして、選挙管理委員会はPRに必死のようです。

2012年10月20日、土曜日
絆ストレスの本の表紙"
精神科医の香山リカさんの著書「絆ストレス、つながりたいという病」を読みました。
2010年は孤独死が社会問題化され、その背景に人と人がつながりを失った”無縁社会”の存在が指摘されました。そういった状況下で2011年3月11日に発生した東日本大震災では、被災地の住民が助け合って難事を乗り越えようする姿がマスコミにによる”絆”の連呼とともに連日報道され、強い絆こそが幸せに近づく絶対条件であるかのような風潮が広がりました。しかし、香山さんは日常診療の経験をもとに、このことに違和感を覚え、精神のバランスを崩す人が増えていると指摘します。
本書は、誰かとつながっていないと不安、けれど、あまり強いつながりは息苦しく感じてしまう。そんな相反する関係性から、現代社会で求められる“新しいつながり”の形を、精神科医の立場から論じています。
香山さんは、時と場合により絆が強くなったり、弱くなったりその加減がつけられる、いわば”都合のよい絆”を最後に提言されていますが、そんな関係性って実際にあるのか疑問です。お互いに都合のいい時だけ関係性が持てるのは、お金が介在した時だけではないでしょうか。こんな関係性は絆とは言わないと思います。

2012年10月21日、日曜日Part1
スライド"
理学療法協会の研修会に参加しました。
今回は新潟県立リウマチセンター勤務で、リハビリテーション専門医の曽川裕一郎先生を講師に迎え、「リハビリ専門医がスタッフに望むリハビリテーション評価と介入」と題して、今年5月にメルボルンで開催された第7回世界神経リハビリテーション学会議(WCNR2012)で、亀田第一病院の村岡幹夫先生、新潟医歯学総合病院の木村慎二先生と共に参加され、TPA実施後のリハリビリテーションをテーマにした研究をポスターセッションで発表された様子などを織り交ぜながら、リハビリテーション医学の最先端と、日常臨床で知っていなければならない知識を総合的に講義していただきました。
医療の世界ではあらゆる分野で診療ガイドラインがありますが常に改定があり、リスク管理という意味からもしっかり学習しておかないといけないことや、サチュレーションを意識した訓練などは、患者さんを守るという意味でも、自分を守るという意味でも大切なことだと改めて思いました。
急性期治療により病状は安定し、回復期リハビリテーションによりある程度、機能が回復した患者さんに維持期リハビリテーション、言葉を変えれば生活に密着したリハビリテーションが必要であるという考え方も分かります。けれど、それはいつまで続けるのでしょうか。私はヘタレだから死ぬまでリハビリするなんてイヤだなぁ。

2012年10月21日、日曜日Part2
スライド"
新潟県眼科医会の主催で、新潟市民プラザにおいて開催された市民公開講座を聴講しました。
講師は新潟大学名誉教授で新潟医療福祉大学教授の阿部春樹先生で、「加齢に伴う眼の病気の治療と予防」をテーマに加齢黄斑変性について、その病態と治療、予防をスライドや動画を使い、とてもやさしく解説していただきました。
秋で過ごしやすい休日の午後ということもあり、540席の客席が全て埋まる大盛況で、講演の後には眼科医による個別医療相談会もありました。
加齢黄斑変性という病気については、現在販売されている”NHKきょうの健康10月号”に詳しい解説が掲載されています。
講義の中でなるほどと思ったことは、治療に関しては加齢黄斑変性の症状を老化現象と考えてしまい、早期治療の機会を逸してしまう人が多いこと。予防に関しては禁煙など生活習慣病の予防が基本であり、その上で老化にともなう目の病気に大きくかかわる活性酸素の影響をできるだけ抑える方法として、ポリフェノールやカロテノイドなどの抗酸化酵素やビタミン、亜鉛、セレンなどのサプリメントの摂取も有効であることです。
予防に対してのサプリメントということについては、高齢者は処方薬を常用していることも多いので、医師や薬剤師に相談してから使うようにしたほうがいいと個人的には思いました。

2012年10月26日、金曜日
ほっともっとのお弁当"
私が民生委員を務めていた数年前より、長岡市社会福祉協議会から町内会に対して高齢者福祉のための助成金がいただけるようになったことがきっかけで、70才以上の方を対象に年数回、お弁当を配る事業が始まりました。現在は助成金だけでは足りなくなり、町内会からも一部負担していただいて、町内の福祉事業として継続しています。
この事業を始めるにあたり一番困ったことは対象者の選定です。行政に聞いても個人情報保護法があり教えてはくれないことは予測できましたから、私の患者さんたちに聞いたり、老人会の役員さんに聞いたり、なんとか数十人をリストアップしてスタートしました。
こんな経過があり、現在もこの事業にかかわっています。もっとも私がやることは事務作業や商品の選定、発注と支払いで、配達はうちの近所の人たちです。ボランティアをお願いすると快く引き受けて下さり、しかもクルマまで無償で出していただいて、本当に感謝しています。
今回は3回目で、ほっともっとの幕の内弁当です。あっ、当然私の分はありません。あはは。

2012年10月28日、日曜日
映画、終の信託のチラシ"
映画「終の信託」を観ました。周防正行(すお まさゆき)監督作品で、原作は現役の弁護士で作家の朔立木(さく たつき)さんの同名小説です。
終末期医療の現場を舞台に、愛する人を失うかも知れない時、人はどう決断し、何によって裁かれるのか。心が引き裂かれるような大人の愛の物語でした。
この物語に登場する人物は皆、それぞれ弱さや欠点をかかえています。人は誰も弱さや欠点をかかえて生きているものであり、それを責めることなど誰もできないことは、人生半ばも過ぎた人であれば、うなずいていただけると思います。この物語は、そういった弱い人間同士がおりなす関係性の中で起こった出来事であり、だからこそ、そういった”ふつうの人”を裁く司法というものの問題点が鮮やかに浮かび上がっていたように思います。
医者が患者のためを思って全知全能を尽くして取った処置が、思うような結果に至らなかったからといって刑事責任を問われるなら、医者になる人などいなくなります。
インフォームドコンセント(知らされた上での同意)にしても本来は患者さんのためにあるものが、医療者が責任を回避する手段になっていないか、もし、そうなら不幸なことです。
エンドロールが流れる直前、最後のシーンに原作にはない”救い”が描かれており、なんだかホッとしました。
パートナーがおられる方は、ぜひ一緒にご覧になって、秋の夜長、感想を語り合うのもいいと思います。

2012年11月10日、土曜日
学問のススメの本"
ジャパンエフエムネットワーク編集の「学問ノススメ。学校では教えてくれない達人の知恵」を読みました。
学校では教えてくれないことや、教わったけれど忘れてしまったこと、授業中寝ていて聴いていなかったこと(これは私だけ?)などを、学校の授業より楽しく学べるラジオ番組「学問ノススメ。」のスペシャルエディッションとして編集された本です。
各分野に精通する21人の賢者が疑問、難問を楽しく、やさしく、分かりやすく解説しており、知ることは世の中をもっと楽しく生きていくために、人生を豊かにするために必要であることを教えてくれる内容になっています。
21人の執筆者のうち、生物学者の福岡伸一さん、哲学者の土屋賢二さん、翻訳家の柴田元幸さんの文章は私は初めてで新鮮でした。特に土屋さんの”当たり前”を疑う精神があらゆるものを新鮮に見せるという、ものの見方は共感しました。多くの人は、目が見えない人が駅のホームから落ちるのは仕方ないこと。だって”ふつうは”見えるのだからと言います。でも、その”ふつう”は誰がいつ決めたのでしょう。ふつうや当たり前は、時や場所、文化により簡単に変化してしまうものです。数学や物理の定理は別にして、相対はあるけれども絶対はないのが世の中ではないでしょうか。
そして、”男はふんぞり返らずに、女性に気に入られる努力をすべきである”という土屋さんの提言は、今やフェミニストならずとも、そうしないとこれからは生きていけないと、私を含め多くの男たちが感じているのではないか、そう思いました。

2012年11月13日、火曜日
ピロリ菌抗原採取キット"
ピロリ菌抗原検査を受けました。この方法は、便中に排泄されるピロリ菌の抗原を直接検出する検査法で、現在の感染の有無が判定でき、ピロリ菌の除菌前の感染診断にとても優れた方法です。
HelicoBacterPyloriと胃がんの関係性については、東京大学教授で病因、病理学がご専門の畠山昌則先生が、ピロリ菌が作り出すタンパク質が胃の細胞に侵入すると、CDX1という遺伝子が働いて別の2種類の遺伝子を活性化させ、胃の細胞が消化管のさまざまな細胞に成長する幹細胞のような状態に変化することを、アメリカ科学アカデミー電子版に、2012年10月29日付けで発表されています。
これまでもピロリ菌が胃潰瘍や胃がんの大きな原因のひとつであるといわれてきましたが、それを裏付ける研究として価値があると思います。
医師の間ではピロリ菌の除菌に関して、積極的に除菌すべきという意見と、除菌に使う抗生物質の副作用や除菌後の逆流性食道炎の発症リスクを考えると、除菌をする対象者の選定など、慎重にすべきであるという意見があるようです。
現在、ピロリ菌感染者は全国で約6千万人といわれており、年間約25万人の人が胃がんになっています。つまり、ピロリ菌の感染を放置しても、胃がんになる確率は1パーセント以下です。これをどう捉えるかですが、私は抗原検査が陽性であれば除菌しようと考えています。

2012年11月17日、土曜日
Dr.HOUSEの名推理の本"
新潟県上越市大潟区にある独立行政法人国立病院機構さいがた病院院長で、神経内科がご専門の下村登規男先生の著書「Dr.HOUSEの名推理、正しい診断はこうして下される」を読みました。
下村先生のこれまでの診療体験などを基に、下村先生が理想とする医療のあり方や、医師が診察で見逃しがちな注意点などを51本のコラム形式でまとめた内容です。
本来は、研修医や若いお医者さんに向けた診療技術向上のための本のようですが、やわらかい文体で分かりやすい表現は、市民や患者さんが医師の考え方を知り、医師とのより良い付き合い方を学ぶテキストとして使えるのではないかと思いました。
”診断の近道は、いつも初心を忘れずに、きちんと患者さんに問診することである”と下村先生は戒めます。医療に限らず、私と同年代の方が立派な仕事をされているのを拝見するたび、今更ながら自分の小ささを思い知ります。

2012年11月18日、日曜日
11月13日分のこのコーナーで、日本には約6千万人のピロリ菌感染者が存在し、その中で胃がんを発症するのは年間約25万人であるから、胃がんを発症するのはピロリ菌感染者の1パーセント以下であると書きましたが、間違っていました。すみません。
2008年に日本人を対象とした以下のような研究が報告されていました。
The effect of Helicobacter pylori eradication on reducing the incidence of gastric cancer.
J Clin Gastroenterol. 2008;42:279.
この研究では3.2年間の調査で、ピロリ菌感染者の胃がんの発症率は4.3パーセントであり、除菌に成功した人の発症率は1.5パーセントであったと報告されています。

2012年11月24日、土曜日
11月13日に提出したピロリ菌抗原検査の結果、私は陰性という判定でした。
私が高校生まで育った環境は、上下水道がなく、飲み水は井戸水で、畑にヒトの糞尿をまいて野菜を育て、それを食べて生活する、解剖学者の養老孟司さんなら絶賛するであろう、子供が辛さから逃げるための自然という避難場所がある優しい土地でした。そんなわけで、ピロリ菌の感染については間違いなく陽性だろうと思っていたので陰性という結果は意外でした。
ピロリ菌の検査と除菌について検索すると、検査キットも除菌に使う抗菌薬も通販で購入できるようだし、利用している人もいるようです。しかし、検査の信頼性や、抗菌薬はサプリメントではなく副作用もある治療薬であることを考えると、信頼できる内科医のもとで検査、除菌をするべきです。この点は強調しておきたいと思います。

2012年11月29日、木曜日
人はひとりで死ぬの本"
宗教学者の島田裕巳さんの著書「人はひとりで死ぬ、無縁社会を生きるために」を読みました。
2010年1月にNHKで放送された「NHKスペシャル、無縁社会」は大きな反響を呼び、世の中とのあらゆる”縁”を失い、孤独な死を迎えることへの不安は現在も広がり続けているように感じます。
この問題は昔のような「有縁社会」を取り戻したり、政府が対策を拡充すれば解決する問題なのでしょうか?私たちが自由な生活を求めた果てに到来したといえる無縁社会。ここで、一人一人が十分に生き、そして死んでいくために見すえるべき真実とは何か。本書はそれを探る手がかりとして、一読に値する内容だと思います。
島田さんは、高度成長期の日本社会において、多くの人が地縁、血縁中心の村社会から自由になること、つまり、無縁を求めてきたと指摘します。現在の無縁社会、孤独死の問題はその結果であり、結果だけを問題視するのでは解決はしないというのです。そして、大前提として”人はひとりで死ぬ”という認識の重要性を説きます。
私たちは、個人が村や家といった共同体に縛られない人生のあり方を望み、それを実現させてきました。そこには、束縛の少ない自由な暮らしがありました。でも、それは同時に無縁につながる生活でもあり、最期は無縁死に終わる人生です。そして、そちらを選択した以上、私たちはそうした生き方をまっとうするしかなく、それは動かしようのない事実であり、結論になるのでしょう。島田さんは、自ら無縁を望んでおきながら、最期になって無縁死を恐れる姿勢について批判します。
最期は”ひとりで死ぬ”その現実を受け入れ、そこから出発するしかないのでしょうが、少しは救いはないのでしょうか。村社会型の強固な縁ではなく、精神科医の香山リカさんが提言されているような、必要なときにつながれる”ゆるい縁”ともいうべき関係性を築いていくという方法もあるのではないでしょうか。

2012年12月9日、日曜日
12月のドカ雪"
朝、起きて駐車場を見てビックリです。午前1時に見た時には何も無かったのに、午前7時には30センチくらい積もっていました。あわてて消雪ポンプの電源を入れ、スノーダンプにスコップを引っ張り出して除雪作業開始。12月も上旬のドカ雪に、天に向かって文句をいいながら2時間かけて終了。
去年も大雪でしたが、今年も思いやられます。

2012年12月20日、木曜日
相対性理論のテキスト"
毎週水曜日の夜11時からNHK教育テレビで放送されている番組「100分de名著」のテキスト「相対性理論」を読みました。
番組を簡単に紹介すると、世界的な名著を取り上げ、その奥深さを、やさしい言葉で分かりやすく、かつ楽しく解説するという内容で、毎週1回、25分間の放送が4回、つまり100分で1作品が完結するという構成になっています。
番組ナビゲーターは博学なお笑い芸人の伊集院光さんと女性アナウンサーで、毎回、取り上げる著書に精通したプレゼンターによる、その著書が書かれた背景や、作者の人間性まで踏み込んだ奥深い解説が楽しめます。テキストはより理解を深めるためのガイドで、読まなければ番組を楽しめないというわけではありません。
今回取り上げられた名著はアインシュタインの相対性理論で、プレゼンターは宇宙物理学者の佐藤勝彦さんでした。
日本は三度、原子力による壊滅的破壊を経験し、今も後遺症に苦しみ、その強大な力の使用について賛否両論の議論となっています。相対性理論が、その力を発生させる方法の基礎になっていることは誰もが知るところではありますが、もう一度ふり返って知識の確認をしてみたいと思いました。
質量がエネルギーに変わるという発想、相対性理論は、ガリレイの相対性原理など古典物理学という下地があって、その下地を踏まえた上で、新たな理論を構築することから生まれました。相対性理論の正しさや誤りは技術の進歩により実験で証明され、今日の原子力の利用につながっています。
物理の院生レベルでも相対性理論を正確に理解することは難しいと思いますが、ほんの少し見方を変えるだけで、世の中が違って見えることを番組を通して学びなおすことができ、宇宙の真理を知ることの楽しさを満喫しました。

2012年12月23日、日曜日
映画妖怪人間ベムのチラシ"
映画「妖怪人間ベム」を観て来ました。監督は狩山俊輔さんです。
私が子供の頃、テレビアニメとして放送されていた作品が実写版のテレビ連続ドラマ化され、さらに映画化された作品です。実写版の連続ドラマはとても視聴率が高かったそうですが、私たちオジサン世代が数字を上げたのではないかと想像しています。
音のない暗い世界で1つの細胞から生まれ、人間になれなかった醜い生き物という設定のベム、ベラ、ベロの3人は、人が顔をそむける異形の中に優しい心を持っています。
彼らは、弱さゆえに他者を思いやる気持ちを失くし、悪に傾いていく人間を信じ、救おうとします。そして、自分たちも、その愚かな人間になりたいと願う物語は奥深く、さらに今回の作品では多数を助けるために少数が偽性になることは正義といえるのかなど、社会問題的な要素も取り入れ、子供から大人まで楽しめる作品になっています。
足の不自由な少女が運動会で一生懸命走るシーンでは、オジサンはウルウルになりました(笑)

2012年12月27日、木曜日
サプリメントはコンビニでも買えるようになり、服用している人も多いと思いますが、2012年11月に開催された米国リウマチ学会で、グルコサミンに関する初めての無作為化比較試験を実施した研究報告がありました。結果は変形性膝関節症の発症に対して、グルコサミン摂取の有意な効果は見られなかったということです。また、コンドロイチンについても大規模二重盲検法を実施し、コンドロイチン投与群と偽薬投与群で、関節痛の改善のスコアーに差がなく、変形性膝関節症に対する効果はないことが明らかになっています。
有名タレントを使った”治る、良くなる、ラクになる”などのイメージを与えるコマーシャルを信じるか、高いエビデンス(科学的証拠)のある研究を信じるか、それはあなた次第です。

2012年12月29日、土曜日
アルミ製伸縮ハシゴ"
写真は、最近ネット通販で購入した「アルミ製伸縮ハシゴNEWスーパーラダー」です。全長3.8mで二つ折りになる構造で脚立としても使えます。さらに伸縮自在で収納時には86cmとコンパクトになり、重量も13.5sと軽量です。価格は13,800円です。
購入した一番の目的はもちろん雪下ろしの際に屋根に上がるためです。うちに以前からあった二連ハシゴは2階の屋根に直接上がるには長さがあっていいのですが、とても重くて、ひとりで振り回すには大変だし、ハシゴを上がり、屋根に最初の一歩を踏み出す時と、降りる時の恐怖感といったらありません。そこで私は診療室の屋根に上がってから、小さい脚立で2階の屋根に上がるという方法をとっています。周囲の人たちから見れば、まどろっこしいことでしょうが、落ちて死ぬよりはマシです。(笑)
そこで、診療室の屋根に上がるだけなら、もっと軽いハシゴがいいと思い、これを買ったというわけです。できれば、これを使う必要がない冬になって欲しいです。

2012年12月31日、月曜日
星の王子さまのテキスト"
毎週水曜日の夜11時からNHK教育テレビで放送されている番組「100分de名著」のテキスト「星の王子さま」を読みました。もちろん番組も楽しみました。
サンテグジュペリの「星の王子さま」は児童文学というジャンルながら、子供の心を失ってしまった大人に向けての示唆に富んだ作品で、「大事なことは、目に見えない」、「身体はその人に入るドアに過ぎない」を始めとした数々の言葉は、生命とは、愛とはといった人生の重要な問題に答える指針として、世界中で広く愛され、読まれ続けている作品です。
「星の王子さま」は1943年の初版以来、作者自身による挿絵が使われており、放送ではフランス文学者の水本弘文さんの解説で、この挿絵から物語を読み解いていきました。
人間は他者との関わりの中で生きるものであり、幸せも不幸も、その関わりの中から生まれてきます。誰かを幸せにしたいと願う時、自分もまた幸せになれることを、思い出しました。

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