2014年1月、2月、3月分の日記です
2014年1月9日 木曜日
絶望からはじまる患者力、視覚障害を超えての本の表紙
長岡の年明けは予報よりもおだやかで、アスファルトは乾いて歩きやすく、屋根の雪も無くなり、3日は陽がさして、おだやかなお正月になりました。この時期に見る青空は、ただ青いというだけで気持ちが軽くなります。
さて、今年、最初の一冊は、知己の医師よりすすめられた、眼科医の若倉雅登先生の著書「絶望からはじまる患者力、視覚障害を超えて」を読みました。 人生の途中で視力を失った6人の患者さんの日常を、主治医の目で取材したルポルタージュをもとに描かれた医療エッセイです。
失明による絶望の淵から再生へと向かう道のりで、多くの医療者や家族、視覚障害者を支援するNPOの人達、そして辛い経験を共有できる同じ障害を持つ仲間とのかかわりが、6人の人生の物語に、どうつづられたのか。若倉先生の鋭い観察力により、症例報告とは違う患者さんへの愛情や温かさを感じさせる人間の記録として、まるで良質のドラマを見るように読めました。
もっとも共感したのは、網膜色素変性症で失明された桜川裕美さんが、これからどういう人生が待っていると思うかという若倉先生の問いかけに、「何か夢があって、これからやりたいことがあるというのが、先生の望む答えなのかもしれません。でも、違うんです。よく死にたいと思うのです。明日の朝、ベッドの中で死んでいればいいのにと・・・」そして幾分涙目になり「でも私、きっと長生きしちゃうと思います」と答えるシーンです。
この著書には「視覚障害を超えて」というサブタイトルがついていますが、桜川さんなら「視覚障害と共に」とつけたのではないかと想像しました。
心をもつ人間にとって障害は必ずしも超えなければならない敵ではなく、障害があることによりかかわることになった周囲の人たちとの関係性が豊かなものであれば、豊かな人生を送れるのではないか。けれど、それでも尚、自分だけで引き受けなければならないことはあり、それは、その人にしか感じられない心の痛みなのだと思います。その痛みと共に生きていくことを選択した桜川さんに、私は、そういうあなたを愛していますと伝えたいです。
次に共感したのは、若倉先生の障害を医療分野だけで論じない姿勢で、患者さんを生活者として診ている点です。医学的治療法がなければ、社会的治療法を考え、患者会を立ち上げるなど、論じるだけでなく実践されていることに感動しました。
現代の医療では治せない患者さんと付き合っていくことは、医師である若倉先生にとって、どんな意味があるのか。ぜひ、聞いてみたいです。

2014年1月11日 土曜日
白山接骨院前の県道に雪が積もっている様子
昨日の朝までは屋根にまったく雪が無く、このまま春になったらいいのになどと思っていたら、昨晩より降り始めた雪が、11日夕方には70cmくらい積もりました。まぁ、この時期ですから、これくらい積もっているのは当たり前なんですが、14日まで降り続くという予報なので、どのくらい積もるのか不安です。雪下ろしをしなくてもいい程度にしてもらいたいです。
写真は当院前の県道166号線、来迎寺駅方面の様子です。

2014年1月17日 金曜日
不二家のチョコクリームチョコタルト
写真は現在セブンイレブンで限定販売されている、不二家のチョコクリームチョコタルト、200円です。
サックリ香ばしいタルト生地に、ビターなチョコレートブラウニー、その上にたっぷりのチョコレートクリーム!このシンプルさが昭和のオジサンにはたまらないのです(笑)
見た目以上に食べ応えがあり、満足しました。

2014年2月3日 月曜日
池上彰と考える、仏教って何ですか?の本
ジャーナリストの池上彰さんの著書「池上彰と考える仏教って何ですか?」を読みました。
本書は3つの章から成り立っています。仏教の素朴な疑問や基礎知識について池上さんが解説した第一章。仏教発祥の地インドで、チベット仏教の高僧ダライラマ14世と池上さんが対談し、仏教の原点について聞いた第二章。それらを通して、日本人にとっての仏教とはどういうものか考える第三章です。 日本は仏教国といわれ、仏教的生死観の中で多くの人は生きて死んでいきます。にもかかわらず、私たちはあまりにも仏教を知りません。
池上さんは、日本の仏教は死者を弔うことに特化し過ぎて、私たち市民が仏教との関係性を見いだせなくなったために、仏教本来の、生きている間の苦しみを救うという真価が伝わっていないと指摘しています。私もその通りだと思います。では、生きるための仏教を知るにはどうしたらいいのでしょうか。
目の前に広がる世界を客観視し、そこから導き出される真理を追究し悟りに至る仏教には、創造主と呼ばれる神は存在せず、現代科学とも基本的には矛盾するものではないように思えます。ゆえに、私のように無信仰な人間にもとっつきやすいと感じます。
本書のような知識人が分かりやすくまとめたテキストから、自分なりの仏教を生活の場に取り入れていくだけでも、やがては救いにつながっていくのではないでしょうか。

2014年2月7日 金曜日
ひな人形
診療室の玄関にひな人形を飾りました。
ちりめん素材でできた人形で、まん丸な輪郭にまん丸な瞳は愛嬌があり、和やかな雰囲気です。
取扱い説明書によると、おひなさまの並び方は東京と京都で違い、東京は向かって左がお殿様で、京都では逆になるそうです。

2014年2月8日 土曜日
カカオが香るチョコと苺のパフェ
写真は現在セブンイレブンで販売されている「カカオ香るチョコと苺のパフェ」、300円です。
チョコ、パフェ、イチゴという世界で一番素敵な言葉の組み合わせを無視できるはずもなく、レジに直行でした。(笑)
ココアスポンジに生クリーム、その上に、ちょっとビターなチョコレートムースのゼイタクな地層の中にイチゴがサンドされており、一番上には生クリームにビターなチョコレートソース、そこにイチゴがトッピングされており、春を感じさせる軽やかな甘さが最高でした。

2014年2月9日 日曜日
映画ブッダ2のポスター
映画「BUDDHA2、手塚治虫のブッダ、終わりなき旅」を観ました。
本作品は手塚治虫が10年の歳月をかけて書き上げた長編マンガ「ブッダ」を映画化したものです。2011年6月に公開された「手塚治虫のブッダ、赤い砂漠よ!美しく」の続編で、全三部作として製作された二作目にあたり、仏教の創始者であるブッダが祖国であるシャカ国の王位を捨て、悟りを得るために出た苦行の旅を描いています。
公開に先立ち、2014年1月27日、アニメ作品としては初めてパリのルーブル美術館において上映され、スタンディングオベーションで幕を閉じたと報じられましたが、手塚さんのどこまでも命を尊重しようという思いが作品全体をつらぬいており、私の汚れきった心も、感動の涙で少しはキレイになった気がします。
人はなぜ生まれ、人はなぜ苦しむのか、そしてなぜ生きるのか。ぜひ、家族で観てほしい作品です。

2014年3月2日 日曜日
田中瑞穂講演会の様子
学問の 静かに雪の 降るは好き
かんじきの かかる家々 春の雨
私は二つ目の句が特に好きで、きびしかった冬が春の雨とともにようやく終わりを告げ、そこに暮らす人たちのほっとした感じが伝わってきて、春の淡い匂いがするようです。雪国の暮らしを肌で知った人でなければ詠めない句です。
実は、この二つの句は、日本脳外科の父といわれる脳外科医、中田瑞穂先生の作品です。
中田先生は森鴎外と同郷の島根県津和野町のご出身で、大正6年に東京帝国大学をご卒業され、昭和2年、34才の時に新潟大学医学部に外科学教授として赴任されました。以来、越後の地で数々の研究業績を挙げ、新潟大学に日本初の脳神経外科を設立されました。また、不如帰派の俳人として、高浜虚子や會津八一とも親交のあった文人医師としても有名です。
2013年は中田先生の生誕120周年に当たり、これを記念して中田先生の医学研究、教育の業績、そして書画など文人的側面も含めた、総合的な講演会が新潟大学有任記念館で、企画展が新潟大学学術資料展示館で、それぞれ開催されました。
中田先生の門下生で新潟大学名誉教授の生田房弘先生のご講演では、御略年譜で脳科学者としての中田先生の業績が紹介され、現在では当たり前に行われている細胞染色や、それを読む技術も、先人の創意工夫の上にあることを改めて思いました。
学術資料展示館では、主に新潟大学が所蔵している中田先生の著書の原稿や日誌、書画、机や本棚、火鉢などを配置し、1957年当時の中田先生の研究室が再現されていました。
生田先生のお話によると、白いカバーのかかった椅子はお客様用であったということです。

2014年3月12日 水曜日
健康ファイル
 突然ですが、皆さん、市町村でやっている、いわゆるメタボ検診でもらった検査結果や人間ドックの検査結果、健康に関する手帳や書類、例えば、血圧手帳や、糖尿病手帳、ワーファリン手帳など。その他、薬局でもらったお薬手帳に説明書、医療機関でもらった検査結果のコピーや、病状説明書。検査や手術の説明書。病院の予約票などなど、もらったけど、どこにやったか分からない、なんていうカタも多いのではないでしょうか。
 実は、これらはすべて健康にかかわる、とても有用な情報であり、ひとつにまとめると、私たち自身が自分で作れる自分のカルテ、健康ファイルになります。
そしてこれを病院や診療所、歯医者さんなどで診察してもらう時に持参して、お医者さんに見ていただくことで、お医者さんは短い診察時間で的確な診察をすることができるようになります。さらに重複する検査などを減らすこともでき、医療費を安くする効果も期待できます。つまり、私たち患者にとっては、賢く医療機関を利用するための強力なツールになるというわけです。
その健康ファイルの実物はというと、どこにでも売っているA4サイズのフタツ穴ファイルに、ジッパー付きの透明なビニールの袋、A4サイズのクリアファイルをはさんだだけというシンプルなもので、だいたい300円くらいで作ることができますから、費用対効果は抜群です。

今回の勉強会の講師である吉嶺文俊先生は、この強力なツール「健康ファイル」の提唱者で、新潟県立津川病院院長を10年間された後、新潟大学医学部総合地域医療学講座の特任准教授として後進の育成に尽力されています。中山間地域の多い新潟県にとっては頼りになる先生です。
統計学的に新潟県の地域と人を考えるだけでなく、春になれば、ゆきわりソウが咲き、チューリップが咲く新潟県の自然。昔は雪に閉ざされた生活が医療を遠ざけた原因であったけれども、今は高齢化が取って代わっている現状など、新潟県の風土を肌で感じ、病院で待つ医療ではなく、出ていく医療が必要なことに考えが至ったこと。更にそこから医療と福祉、行政との連携が必要なことに考えがおよび、健康ファイルもこの発想から生まれたことを、とても楽しく分かりやすくお話していただきました。
 特に今回の勉強会では健康ファイルの効果を、吉嶺先生と新潟大学のドクターたちが、コントで解説してみせてくれたのには拍手喝采で、「あんたたちはコント赤信号か!」と思わず突っ込みを入れたくなるくらい上手く、ユーストリームによる勉強会のネット配信が始まってから一番ネット配信の効果を生かした講演だったと思います。特に、患者役を演じた吉嶺先生は芸が細かくて、ふたりの患者をリバーシブルのジャンパーで演じ分けていたのには感心しました。
 医師も患者も目指しているものは同じはずなのに、医師独特の思考回路が患者には分からず、時に悲しいすれ違いをしてしまうことがあることは、新潟大学の生命倫理の講義で勉強させていただいたことのひとつですが、健康ファイルは医師と患者のコミニュケーションツールとしても使えるのではないかと感じました。ただ、最後にあるドクターがご指摘されたように、医師側が「なんだこんなもの!」という態度を取るとまったく逆効果になる可能性もあると、私も思います。
それでも健康ファイルは価値があると思います。健康ファイル。おすすめです!

Internet Explorer 8.0以降でご覧ください。