2016年7月、8月、9月分の日記です。
2016年7月3日 日曜日
C57型蒸気機関車
学生の頃、帰郷する時は仙台から郡山(東北本線)、郡山から新津(磐越西線)、新津から長岡(信越線)というルートが定番でした。特に磐越西線の車窓を流れる美しい景色が好きでした。
今回、私用で上京する機会ができたので、ならば帰りは磐越西線を使って初夏の磐越道をのんびり楽しむのもいいと思い立ちました。
かねてから一度乗ってみたかった会津若松から新潟まで走る「SLばんえつものがたり号」を探して時刻表をめくると、郡山から会津若松まで「フルーティアふくしま」という列車が走っていることを知りました。
ちょっとぜいたくに、この二つの列車と会津観光を間に入れたオトナ旅は小雨模様ではありましたが、会津武家屋敷に静かに咲くガクアジサイの青紫、風鈴の音に、かつての戦の歴史と悲しみを感じ、鶴ヶ城では会津の文化と学問の歴史を知り、福島産の桃のやさしい甘さ、美しく流れる森と川、汽笛の音に癒される旅になりました。
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2016年7月17日 日曜日
家庭用プラネタリウム
誕生日のプレゼントで、セガトイズ製の家庭用プラネタリウム「ホームスタークラッシック」をいただきました。
この製品は世界初の光学式家庭用プラネタリウムで、約6万個の投影機能があります。日周運動機能や流れ星まで表現することができ、ソフトを交換することで日本の空だけでなく南半球の空や、カラーで銀河を表現したものなどが楽しめます。
実際に投影してみると、星座は忠実に再現されており本当にキレイで、サラオレインの透明なヴォーカルを聞きながら、ゆっくり動いていく星空を眺めると最高の癒しになります。

2016年7月24日 日曜日
スライド
今回の理学療法研修会は、いつもと趣が違い、管理栄養士の古川素子さんをお招きし、健康寿命と食事の関係性を、新潟県における最新の調査データも交えながら解説していただきました。
平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「介護が必要な期間」を意味し、この差をなるべく縮めることは個人の人生においても、社会的にも必要なことはいうまでもありません。
講義では、栄養とは何か、栄養の役割と代謝といった基礎的な知識から、人生のライフステージに合った食事の重要性まで幅広いものになりました。
最近、経済アナリストで糖尿病の森永卓郎さんなど著名人が、低糖質ダイエットに取り組んで目を見張るような効果をあげて話題になっていますが、懐疑的な見方をする専門家もおり、栄養士さんの考えを聞いてみたくてコメントを求めてみました。回答は栄養バランスという観点から低糖質ダイエットは評価しないというものでした。
しかし、森永さんを例にあげれば、現在は薬によるコントロールを全く必要としない状態まで改善することに成功しているわけで、長期的な観察は必要にせよ、まったく否定してしまうのもどうかと思いました。

2016年7月29日 金曜日
目の見えない人は世界をどう見ているのか
伊藤亜紗さんの著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読みました。
伊藤さんは美学者です。恥ずかしながら美学という学問があることさえ知りませんでしたが、芸術や感性的な認識について哲学的に探究する学問だそうです。こう聞いても、なんだかピンとこない人のほうが多いと思いますが、本書のテーマが「視覚障害者がどんなふうに世界を認識しているのかを理解する事」とと聞くと、なんとなく分かったような気がします。
本書を読んで、社会人になって全盲の人と知り合い、一緒に食事したり、キャンプや旅行を経験していくうちに、自分の知っている「ふつう」とは違う「ふつう」があることを知っておどろいたり、感心したことを思い出して懐かしくなりました。本書は視覚障害者にとっての「ふつう」を空間、感覚、運動、言葉、ユーモアという角度から観察することでテーマに迫っています。
とかく「福祉」という視点で語られがちな障害について、「身体」というテーマで迫る伊藤さんの取り組みは、面白いものですが、もっとも印象に残ったのは、障害があるからできることもあるという見方です。
一例としては、美術館で視覚障害者と晴眼者が一緒に、ひとつの作品について、言葉によるコミュニケーションを通して鑑賞するという方法(ソーシャルビュー)で、作品の物理的な特徴を細部まで知ろうとすることも必要なことではあるけれども、作品が与える印象や、そこから生じた思考を言葉で共有することで新たな鑑賞のスタイルが生まれること。また、ここには視覚障害者を触媒とした人のつながりが生まれ、見えない人がいる効果があるといえます。
これまであまり知られてこなかった見えない人ならではの世界の豊かさを知ることが、バリアフリー社会への道しるべになるのではないか。視覚障害リハビリテーションにかかわる人には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

2016年7月31日 日曜日
シンゴジラ
庵野秀明監督作品「シン・ゴジラ」を観ました。最高!でした。
国産ゴジラ映画としては12年ぶりとなる本作品の最大の特徴は、既存のゴジラシリーズとは一線を隔て、ゴジラを「災害」としてリアルに描いていると同時にゴジラの原点である、人の過ちの末に生まれた「恐ろしい核の化身」としてもきちんと表現されていたことだと思います。
ラストシーンには謎が深まる意味深なカットもあり、続編を期待したくなりました。

2016年8月13日 土曜日
沈みゆく大国アメリカ
堤未果さんのルポ「沈みゆく大国アメリカ、逃げ切れ!日本の医療」を読みました。
2018年の介護保険制度改正に向け議論が本格化しています。主な論点は軽度者のサービス縮小です。また、後期高齢者医療制度についても、現行の負担率を1割から2割に引きあげる見直し案が浮上しています。
日本では国民皆保険制度も介護保険も憲法第25条に基づく社会保障としてあるわけですが、どうもその根幹がゆらいでいるように感じるのは私だけではないでしょう。
2015年6月に、このコーナーで取り上げた堤未果さんのルポ「沈みゆく大国アメリカ」の続編である本書は、医産複合体という多国籍企業によって、私たち日本人の医療と介護が社会保障から投資商品にされつつある実態を、豊富な1次データと取材によって浮き彫りにしています。
保険証一枚で、いつでも、どこでも、誰でも安価に医療が受けられるという世界に誇る日本の皆保険制度はなんとしても守っていかなくてはなりません。
それには私たち一人一人が医療に参加すること、医療制度にも関心をもつこと、マスメディア報道をうのみにせず一歩引いて考えてみることが大切だと思います。
2015年9月にこのコーナーで紹介した新潟大学の吉嶺文俊先生が提唱されている「健康ファイル」の利用なども、私たちができる医療を守る活動になると思います。

2016年8月14日 日曜日
モネ展
新潟県立近代美術館において開催されている「モネ展」を鑑賞しました。
モネといえば、言わずと知れた18世紀終わりから19世紀初頭まで活躍した印象派の巨匠です。
睡蓮を題材とした作品はあまりにも有名ですが、それ以外にも風景画を描くようになる前の、人物を題材にした風刺画なども展示されており、山藤章二に負けないくらいのデフォルメの面白さがありました。
私が一番気に入ったのは「ヨット、夕暮れの効果」という作品で、ヨットの浮かんでいる夕日を写している水面がやさしく動いているようで、おだやかな気持ちになります。モネの最大の魅力は、この水面の美しさだと思います。
印象派の画家の作品を観ると私はなぜか、さだまさしの曲を思い出すのですが、小説でいえば短編小説のようで、観る芸術も、聴く芸術も、読む芸術も実は同じではないか、そんな思いがした展覧会でした。

2016年8月23日 火曜日
コンビニ人間
村田沙耶香さんの小説「コンビニ人間」を読みました。
今や知らない人はいないであろう「コンビニ」というスポットをキーにしており、とても入りやすく、その一方で芥川賞にふさわしい奥の深い作品に仕上がっています。
村田さんの作品は、このコーナーの2016年4月18日分で「消滅世界」を取り上げています。「消滅世界」が空想世界であるのに対し、本作は現実世界に軸を置いたリアリズム作品ですが、その突出した想像力は共通しており、彼女の文学世界を特徴づけていると思います。
小銭を持っていれば誰でも手に入れることができる小さな幸せを売っている、資本主義がたどり着いた「コンビニ」という消費空間。ここを舞台に現代人の働き方や生き方、あるいは「ふつう」とはなにかなどが村田さん独自の視点であぶりだされています。
いろいろな感想があると思いますが、大きな集合(世間様)でダメ人間の烙印を押されても、小さな集合(コンビニ店員)なら生きていられる、ある意味、倒錯した希望のように映ることにも共感する読者は多いのではないでしょうか。

2016年8月28日 日曜日
ふれて楽しむ美術展
第17回日本ロービジョン学会学術総会のプログラムとして開催された「ふれて楽しむ美術展」を鑑賞しました。
一般的な美術館では、どんなジャンルであれ作品に触れることは禁じられており、そのため視覚障害者にとって美術鑑賞は縁遠いものになっていますが、この美術展は手触り、肌触り、香り、音など視覚以外の方法も用いて鑑賞するバリアフリーな展覧会でした。
あらゆる美術作品は例外なしに、鑑賞する人の心の中で再構成されて美術作品となるものだと思いますが、視覚以外の情報も加わることによって、気付かなかった別な世界が広がるようでした。
「還元への道」というタイトルの、石板に、らせん階段のような彫刻を施した作品は、目を閉じて、人差し指と中指を足にして、作品の平らな面から階段を歩くと、風が吹く石畳の広場に、どこかに続く階段がある風景が心に広がりました。
美術館で視覚障害者と晴眼者が一緒に、ひとつの作品について、言葉によるコミュニケーションを通して鑑賞するという方法(ソーシャルビュー)があることを伊藤亜紗さんの著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」で知りましたが、会話が自由なこの美術展で、鑑賞しながら語らうことの楽しさは勿論、鑑賞自体が深くなることも実感しました。
新潟県には公立の素晴らしい美術館がいくつもあります。ぜひ、学芸員さんも含めたソーシャルビューを企画してほしいと思いました。

2016年9月3日 土曜日
50オトコはなぜ劣化したのか
精神科医の香山リカさんの著書「50オトコはなぜ劣化したのか」を読みました。「団塊の世代」「ゆとり世代」など、世代論をからめて社会の変容が論じられることはありますが、香山さんは年齢と共に成熟して社会のリーダーになっているべき50代の男性が、同世代の女性に比べてはるかに未成熟で、本来の役割を果たせていないと主張されます。本稿では、そこに至った原因は何か、50オトコは残り10年の人生(健康寿命という意味)で何をなすべきかを提言しています。
そういうわけでとても手厳しいオジサン批判なわけですが、一般化できるほどの調査データを示しているわけでもなく、あくまでも香山さんの主観であって説得力に欠けると感じました。もう少し専門である精神病理学的な分析を期待したのですが残念です。
香山さんに反論するなら、偏りなく冷静に考え一票を投じることがマクロな社会参加では最も大切なのであって、香山さんのように政治デモに参加して「死ねー!このブタ野郎!」と中指を立て警官に向け大声を張り上げることだけがリーダーシップではないと思います。ひ弱なオヤジの言いわけでしょうか。

2016年9月4日 日曜日
映画「後妻業の女」ポスター
鶴橋康夫監督作品「後妻業の女」を観ました。鶴橋監督は新潟県村上市(旧荒川町)のご出身で76才になられます。原作は黒川博行さんの同名小説です。
結婚相談所の所長と結託して、資産のある独身老人から財産ばかりか命まで奪ってしまう主人公、小夜子。作品は彼女の犯罪に気付いた被害者老人の娘との対決を中心に、どす黒い人間模様が展開していくというストーリーです。
サイコパスを思わせる小夜子は、他者に対する共感や罪の意識がまったく無く、自分の欲望のみに生きる恐ろしい女性で、首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗容疑者を連想しました。
財産目的で結婚、さらには命を狙われた老人たちは、小夜子の恐ろしさに気付かなかったのか。私は深い孤独ゆえに、気付かないふりをしたのではないか。そんな気がしました。
この作品では富裕層の高齢者が描かれていますが、中年期から貧困に陥ったまま抜け出せないで高齢期を迎え、社会から孤立して孤独死に至る人が増えていることが社会問題になっている現代で、たとえ騙されたにしろ、どんな形であったにしろ、「その時」そばにいてくれる人がいただけ幸せなのかも知れません。

2016年9月18日 日曜日
すこやかともしびまつりポスター
長岡市役所アオーレで開催された「すこやかともしびまつり2016」にボランティア参加しました。
「すこやかともしびまつり」とは、長岡市の主催で、身体障害者、知的障害者、精神障害者、高齢者、こどもの各団体などが集まって、各団体による作品展や健康団体による体験コーナー、福祉施設による雑貨やお菓子の販売、地元野菜を使った地産地消店舗による食事ブース、スタンプラリーといった楽しい企画が目白押しの年に一度の福祉イベントです。
私は今回が4回目の参加で、健康相談と運動指導を担当させていただきました。この日はあいにく朝から雨模様で、お客さんの出足もまばらでしたが、おひとりの話にゆっくり耳を傾けることができて良かったです。

2016年9月21日 水曜日
感情的にならない本
和田秀樹さんが精神科医であることは広く知られていますが、医学部受験専門の学習塾も経営されているようで、何年か前まで私のところにもDMが届いていました。彼と同世代としてはメディアでの発言にも注目しているし、著書も何冊か読んでいます。今回ご紹介する「感情的にならない本」は精神科医らしく感情のコンディションを整える方法を日常レベルの言葉で解説した実用書です。
・自分の思い込みにこだわらない。
・「これしかない」ではなく「いろいろある」と考える。
・「それもそうだ」一呼吸置く。
・他者の悪感情にはつきあわない。
・「こうでなければならない」という決めつけをしない。
どれも過去を振り返ると納得できることばかりでした。自分にも他人にも気持ちいい人でいたいと思います。

2016年9月25日 日曜日
映画「怒り」ポスター
新潟市出身の李相日監督作品「怒り」を観ました。原作は吉田修一さんの同名小説です。
現場に「怒」という血文字が残った未解決殺人事件から1年後の漁港、都会、沖縄を舞台に三つの物語が紡がれる群像劇で、前歴不詳の3人の男と出会った人々がその素性をめぐり、疑念と信頼のはざまで揺れる様子が重厚なタッチで描かれています。
軽度の知的障害がある娘と漁港に暮らす中年男が、娘が抱える心の痛みを知った時に、その痛みさえ信じてやれない自分自身に狼狽する姿は切なく、きれいな愛情だけではない、もっと複雑な思いを自身の内にも抱えていることを観客は思うに至ります。
都会、沖縄の物語も無駄なシーンがなく2時間半が短く感じられ、犯人追跡のサスペンスとしても楽しめましたが、人を信じることの難しさ、人の痛みを分かることの難しさが心に貼りついて、なんとも言えない後味の悪さが残る作品でした。
心温まる作品が多い中、人間の見たくない部分に光を当てた作品は貴重だと思います。

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