2017年7月、8月、9月分の日記です。
2017年7月2日 日曜日
映画「昼顔」チラシ
西谷弘監督作品「昼顔」を観ました。
本作は2014年放送のドラマ「昼顔、平日午後3時の恋人たち」の続編となっています。ドラマでは重要な役回りだった吉瀬美智子さんも当然出演していると思い楽しみにしていたのにスクリーンに彼女の姿はなく、がっかりしました。
「不倫」といえば連想するのは「失楽園」ですが、本作は脚本を女性が書いており「梅は正妻、桜は愛人。梅の堅実さを尊敬しながらも、妖しく、はかない桜に男はひかれる」という渡辺淳一さんのそれとは趣が違って、背徳がゆえに狂おしく甘味が増していく関係性だけでない、二人の周囲で確実に不幸になっていく人をリアルに描いているところが女性目線であると感じました。ただ、両夫婦には子供がいないという設定は同じで、映画と現実の折り合いをつける条件なのかと感じました。
恋愛がドラマになるのは何か障害がなければならず「不倫」も使い古されたシュチエーションではあるものの、何度も描かれるのは誰もが潜在的に「不倫」に対して欲求があるからかも知れないと思います。
印象に残ったのは、主人公が必死に駅のプラットホームを這い上がり、新たな希望を予感させるラストシーンでした。「失楽園」と最大の違いはここで、女性の強さを表現していたと思います。
女性週刊誌のアンケートでは20代から40代の妻の3割が婚外恋愛の経験があると答えていますが「不倫」は文化なのでしょうか。

2017年7月10日 月曜日
「挫折を経て猫は丸くなった」の表紙
ラジオが好きで、文化放送の「大竹まことのゴールデンラジオ」をポッドキャストで聞いています。
日替わりで担当が代わる「大竹紳士交遊録」のコーナーで漫画家の天久聖一(あまひさ まさかず)さんが「書き出し小説」なる新たな文芸?を創造して楽しんでいることを紹介されていたのを聞いて、これくらい敷居を下げれば、読み手から書き手に誰でもなれるし、言葉ゲームとしても面白いと思いました。
書き出し小説とは文字通り、1行だけ、書き出しだけで成立した極めて短い文芸スタイルで、特にルールを設けない自由部門とテーマに沿った規定部門があります。本書「挫折を経て猫は丸くなった」はプロの書き手ではない人が書いた416個の書き出し小説を集めたものです。
書き出しだけなので当然のことながら続きは読者が想像することになるわけで、そこが妙味というわけです。
なにかのサークルとかで、無記名の作品を持ち寄って読んで、書き出しの後の展開や感想などをみんなでしゃべって、最後に書き手は誰かを発表するのも面白いと思います。
今、思いついたものを書いてみます。
・暑そうに前を歩いていたカラスが話しかけてきた。
・「95番の方」が自分だと気づくまでにしばらくかかった。
・氷小豆だけは私より早く食べ終えるメグミ。

2017年7月15日 土曜日
NHKテキスト維摩経の表紙
6月の読書バラエティ番組「100分de名著」は「維摩経」でした。
維摩経は般若心経と同じく大乗仏教の代表的な経典で、今、ここにある苦しみから解放されるためにはどうすればよいかを説いています。
大乗仏教の根本原理である「空」「縁起」を普段の生活に生かす方法について具体例を挙げながらの解説はわかりやすく、現在の成熟社会、格差社会をどう生きたらいいか、沢山のヒントがありました。
私たちは、他人に迷惑をかけない限りは何をやってもかまわない、また、迷惑はかけてほしくないと、当たり前のように思っています。こうした自己決定社会では、人は老いたり障害があったりすると孤立しがちになります。だからこそ、意識的にコミュニティへ参加しながら暮らしていく心がけが大切になります。あらゆる存在や現象は関係性で成り立っているという縁起の思想の実践です。しかし、一度関わったコミュニティにしがみつくのもよくありません。一度結んだ関係性をすんなり手放せる「こだわりのなさ」が大事になってきます。縁があればつながり、なければ離れる。これが空の思想の実践です。
私にとって仏教は信仰ではなく学びであり、苦しみから解放されるには、こだわりや執着を手放すことだと仏教の経典は教えてくれます。ただ、それを実践することの難しさを痛感する日々です。

2017年7月16日 日曜日
しろう庵の「冷やしたい焼き」
長岡駅東口にある「しろう庵」さんの「冷やしたい焼き」を食べてみました。
冷たくモチモチした皮にホイップクリームとこしあんが包まれており、通常のものと比べると大きさも4分の3ほどで小さく、個別に包装されています。1個160円です。
好みもあるでしょうが、通常のものを冷蔵庫で冷やして、「冷やしたたい焼き」にして食べるほうが私は美味しいと思います。

2017年7月20日 木曜日
続・下流老人の表紙
2017年7月18日、内閣府の公的年金有識者検討会において、元気な高齢者を支援するという観点から、公的年金の繰り下げ支給の幅を広げる可能性について、75才を超えてもいいのではないかという議論があったようです。
この検討会は年金の制度作りを担う会議ではないため、ただちに実現するものではありません。しかし、公的年金の支給年齢引き上げを視野に入れた政策の方向性を示しているわけで、老後の厳しさを考えると気が重くなるのは私だけはないでしょう。
さて、貧困に苦しむ高齢者を「下流老人」という言葉で可視化し、些細なきっかけで誰もが貧困に陥る可能性があるという事実と、現代の社会保障システムのもろさを緻密なデータと現場取材から読み解いたレポート「下流老人」の第2報となる、藤田孝典さんの著書「続・下流老人」を読みました。
「高齢期の労働と貧困」というテーマで、老後も働くことで何とか生活を維持している高齢者の実態から見えてくる、老いてもなお働き続けなければならない理由と、すべての貧困問題の解決に向けた筋道を考える内容となっています。
マスコミは貧困問題を高齢者、障害者、子供、シングルマザー、女性など、それぞれ個別に取り上げていることが多いと思いますが、本書を読むと実はそれらは相互リンクしており、自己責任論で片づけることができない社会システムの歪みが根底にあることがわかります。
社会保障を語る時にセットになる財源問題についても言及しており、若者と老人、健常者と障害者など、得する人と損する人に分断するような現在の納税と再分配システムを、誰もが受益者となるような共存型再分配システムにすれば不公平感無しに格差が是正されて貧困を減らせるという考え方に共感しました。

2017年7月23日 日曜日
血管年齢測定器
アピタ長岡店の2階、ユニクロの前にある血管年齢測定器を使ってみました。血管推定年齢と動脈硬化の傾向を測定するというもので、原理的には加速度脈波を使って、末梢血管の柔軟性を光学的に測定するものだと思われます。
使い方は、お金(200円)を入れ、年齢と性別を入力し、右手人差し指をセンサーに差し込むだけです。数十秒で結果がディスプレイに表示され、同時にプリントアウトされます。
果たして、末梢血管循環機能は実年齢に比べて10才ほど若く、良好であるという判定でした。
まぁ、精度がどのくらいか疑問ですが動脈硬化と糖尿病、虚血性疾患、高血圧、脳血管疾患が関係があることを知ってもらって、健康に関心を持つ機会を作るという意味で有意義なのだろうと思います。

2017年7月30日 日曜日
京都タワーからの夜景
学会で京都に行って来ました。
今回は認定試験だったのですが日本全国各地から医師、看護師、理学療法士など83名が集まりました。
グループワークで親しくなった人たちに聞いてみると、参加経費は自腹だという人が多いことに驚きました。かつては病院が負担することが当たり前でしたが、病院経営も厳しい時代になったということでしょう。
そういう状況下にあっても、より質の高い医療を提供するべく頑張っている看護師さんの話など聞いていると本当に頭が下がります。試験に先立った研修の冒頭、代表で東京大学の先生が「お互いに先生という敬称を付けるをやめ、さん付けにしましょう」と提案されたことにも感動しましたが、こういう志の人の輪に加えていただいて本当に幸せです。
そういうわけで、今回は認定試験を受けることが目的だったので観光は一切なしでした。それでも折角の京都なので地元の医師に聞いてみたら「それじゃ、京都タワーでも行ってみたら」と言われ、市営地下鉄烏丸線で京都駅まで戻って京都の夜景と夕食を楽しみました。

2017年8月6日 日曜日
グラフィックボード
1ヶ月くらい前から自作PCの調子が悪く、電源を入れOSが起動する前、POSTの段階で再起動を繰り返すようになりました。ただ、毎回というわけでないところが悩ましく、CMOSをクリアしたりしてみましたがダメで、どうもビデオシーケンスプロセスでエラーになるようなのでグラフィックボードを交換することにしました。
GPUにNVDIA GEFORCE GT730を載せた玄人志向のグラフィックボード、6,440円を購入しました。補助電源が要らないタイプです。
結果は思った通りで元に戻ってくれました。

2017年8月10日 木曜日
レモンかき氷と炭酸水で作ったレモンスカッシュ
今年の5月くらいから放送されていた、蚊取り線香で有名な金鳥のラジオCMが絶賛されて話題になりましたが、私も番組本編より気になるくらい楽しみにしていました。
中学生の男の子と女の子の会話をラジオドラマ風のストーリー仕立てにしたもので、田舎の夏の情景と淡い恋心がノスタルジックに胸に迫り、遥か遠くに忘れてきた感情を思いださせてくれるようでした。
写真は、コンビニなどで売っている、かき氷「サクレ」をコップに移し、そこに冷やした炭酸水を注いで作ったレモンスカッシュです。遠い夏の日の味がします。

2017年8月15日 火曜日
転倒予防指導士認定証
日本転倒予防学会の転倒予防指導士に認定されました。
要介護状態となる原因は上位から、脳卒中、認知症、フレイル(衰弱)、骨折となっています。これらをできる限り予防することが健康寿命を延ばすことにつながるわけですが、適切な介入、支援を行うことにより生活機能の維持、向上が可能なことが疫学的研究から明らかになっています。
転倒予防指導士は生活環境のアドバイスや運動療法を通して転倒による骨折を予防することを主な使命として、医療、介護のスペシャリストと共に活動します。学会活動としては年1回の学術集会、単位制の生涯教育を実施しており、2019年には朱鷺メッセにおいて立川メディカルセンターの立川厚太郎先生を会長に学術集会を開催します。

2017年8月19日 土曜日
日本会議の正体の表紙
元共同通信社記者でジャーナリストの青木理さんの著書「日本会議の正体」を読みました。
現政権(第3次安倍内閣)とも密接な関係を持ち、憲法改正などを掲げて政治運動を展開する、自民党のバック団体にして日本最大の右派組織である「日本会議」(にっぽんかいぎ)。本書は、その成り立ちと活動の歴史、現在の活動状況を関係者の証言を軸にまとめたルポルタージュです。
ざっくり説明すると日本会議とは、戦前より続く右派系の新興宗教「生長の家」、神社本庁(神道)を中心とした宗教団体で構成された「日本を守る会」と、右派系の学者や文化人、政治家、財界人などで構成された「日本を守る国民会議」という二つの組織が1997年に合併する形で生まれた宗教右派組織です。
日本会議が主張することは、
1.皇室中心の日本(国民主権の否定)
2.新憲法制定(改憲を含む)
3.伝統的家族感の実現
4.国防の充実
5.誤った歴史観の修正
に集約され、まるで戦前に戻るかのような復古的で国粋主義とさえいえる内容です。これが安倍総理の掲げる「美しい国」だとすれば違和感を感じます。
日本会議は右派系の学者や財界人、文化人らのそうそうたる面々が役員に名を連ねており、ロビー団体としての源を明確に示していますが、その活動に呼応して中央政界でその政策実現に尽力する日本会議国会議員懇談会に第3次安倍内閣の閣僚の65%が所属し、首相側近である官邸スタッフほぼ全員が所属しています。また、明治神宮、伊勢神宮に代表される全国の神社を統括する神社本庁から資金面で、また憲法改正における署名運動などでも強力な下支えを受けて、その活動は地方議会まで浸透しています。
日本が進むべき道を誤らないために、私たち市民が主体的に考える習慣を持たないといけないと、本書を読んで改めて思いました。

2017年8月24日 木曜日
エルゴノミクスキーボード
20年以上使い続けたインチキエルゴノミクスキーボードが修理不能になってしまい、正規のエルゴノミクスキーボード Microsoft L3V-00029[Sculpt Comfort Desktop Windows]7,330円に交換しました。Bluetooth接続でマウスとのセット商品です。
接続は付属の接続のレシーバーをUSBコネクタに挿すだけでペアリングは必要なく、すぐに使えました。
このキーボードの特徴はファンクションキーを通常の割り振りとは別に、Windows10のショートカットキーとして使用できる切り替えスイッチがついていることです。
さすがに正規のエルゴノミクスキーボードだけあって打ちやすいですが、一つだけ注文があるとすればNumLock CapsLockなどのオンオフを確認するインジケーターと、電池切れを予告する工夫があるともっとよかったと思います。

2017年8月27日 日曜日
「トラジマのミーメ」
銀河鉄道999を追って新津美術館に行ってきました。
夏休み最後の日曜日で「松本零士の世界展」の最終日だったにもかかわらず思いのほか空いていて、ゆっくり鑑賞できました。
松本さんは1936年、福岡の生まれ。高校時代に「蜜蜂の冒険」でプロデビュー、大学進学を断念し上京、雑誌に連載するようになり、1963年に同じ漫画家の牧美也子さんと結婚、1971年「男おいどん」で漫画家としての地位を不動のものとし、以降「宇宙戦艦ヤマト」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「銀河鉄道999」などの活躍は周知のとおりです。
少女漫画もかなり展示されており、松本零士といえばSFというイメージが少し変わりました。もっともストーリーを考えると、どの作品も底に流れているのは命に対する優しさや、悩み涙を流す人を愛する姿勢だったりする松本作品は、ジャンルを問わないのかも知れません。写真は本展のため特別に描き下ろした新作イラスト「トラジマのミーメ」です。松本さんもネコ好きだったんですね。
美術館や音楽会で知り合いに会うことはあまりないのですが、哲学者の栗原隆先生に偶然、帰りの売店でお会いしました。栗原先生は今春で新潟大学を退官されましたが、ヘーゲル哲学がご専門です。哲学者は銀河鉄道999をどう語るのか、ぜひ聞いてみたいものです。

2017年8月31日 木曜日
血糖値スパイクから身を守れの表紙
2016年10月に放送されて大きな反響を呼んだNHKスペシャル「血糖値スパイクが危ない 見えた!糖尿病・心筋梗塞の新対策」。ご覧になった方も多いと思いますが、宝島社より番組の内容をまとめた書籍が刊行されました。税別1,000円です。
食後に血糖値が急激に上がる食後過血糖糖(血糖値スパイク)。以前は病気ではないという認識でしたが、近年の研究により糖尿病はもちろん、動脈硬化を早め、認知症、がんを引き起こすリスクを確実に上げることが明らかになりました。
さらに厄介なのは中高年や肥満している人だけでない、すべての年代で体形に関係なく発症し、一般的な健康診断では分からないということです。
番組中ではスタイルの良い若い女性が血糖値スパイクになっていた実例が紹介されましたが、知らずに放置すると数年後には糖尿病になっている可能性が高いということでした。
そこで大切なのは普段の生活習慣で、家庭で血圧を測ること同様に、できれば血糖も家庭で測ること、朝ごはんを抜かないこと、野菜を一番最初に食べ次に肉や魚、ごはんのように食べる順番を意識すること、ゆっくり食べること、食後の軽い運動などです。
血糖の測定に関しては家庭で簡単に使える血糖計が安価に入手できるようになりました。当院では国内の医療機器メーカーテルモの血糖計をご紹介できます。(テルモの製品は家電量販店や薬局では扱っていません)関心のある方は当院までお問合せ下さい。

2017年9月2日 土曜日
小説「影裏」の表紙
書店で装丁の写真に魅かれて手に取ったハードカバーが、文化放送の「大竹まことゴールデンラジオ」で、大竹さんが「読み始めたけど、ただ、オッサンが釣りをしているだけの話でさ・・・」と、あまり面白くないような話をしていた本であることに気付き、芥川賞受賞作なのに、どれくらい面白くないのか興味がわいて沼田真佑さんの「影裏(えいり)」を読みました。
主人公で同性愛者のわたし(今野)が、ただ一人心を許した会社の同僚である日浅。彼が同性愛者であるかどうかは明かされず、それがいつしか疎遠になっていき、東日本大震災で日浅は行方不明となってしまいます。
主人公は自分以外、日浅を探す人がいないことを知ると同時に、自分が知っていたとは別の顔が日浅にあったことを知り愕然とします。
作品の底を流れるテーマはLGBTと東日本大震災なんでしょうが、それを直接描かないで、少し離れたところに置くところが分かりにくくもあり、この作品の良さでもあると思いました。また、釣りの場面で五感に訴えかけてくるような美しい自然描写は透明感があって、もし、BGMをつけるならビルエヴァンスのピアノが似合うと思いました。

2017年9月16日 土曜日
「サイコパス」の表紙
脳科学者の中野信子さんの著書「サイコパス」を読みました。2016年11月初版で24万部を突破するベストセラーです。
サイコパスと聞くと映画「羊たちの沈黙」のハンニバルレクター、邦画では「悪の教典」の蓮実聖司のように、一般的には凶悪な犯罪を犯した人や、思いもよらない残酷な犯罪を犯す人といったイメージがありますが、本書は近年の脳科学の劇的な進歩により明らかになった、サイコパスとは何かを解説しています。
脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、一般人とサイコパスとされる人々では大きく違い、しかも、サイコパスとは必ずしも冷酷で残虐な犯罪者ばかりではないことも明らかになっています。大企業のCEOや政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断をしなければならない職業の人にサイコパシーの度合いが高い人が多いという研究結果も紹介されており、マザーテレサが実はサイコパスだったという説があることには驚きました。また、国や地域で多少の差はあるものの、約100人に1人の割合で存在することも分かってきました。そればかりか、人類の進化と繁栄にサイコパスが重要な役割をはたしてきた可能性もあると中野さんは指摘します。
人間のあらゆる言動、行動、感情、理性といったものが脳科学で説明でき、慈愛とか優しさと良心とか、普遍的な価値であると思っていたことさえ、実は生物として生存のための戦略であって、絶対的な価値ではないという考え方は理解できましたが、AIがもっと進化した時に合理性こそが生存に最重要であるという答えを出したなら、それはサイコパスではないかと思いました。

2017年9月17日 日曜日
映画「エイリアン コヴェナント」のポスター
リドリースコット監督作品「エイリアン コヴェナント」を観ました。コヴェナントとは前作のプロメテウス同様に物語に登場する宇宙船の名前です。
本作は2012年公開の「プロメテウス」の続編で、1979年公開の「エイリアン」へと続く物語です。プロメテウスが2089年、コヴェナントが2104年、エイリアンが2122年という時間設定になっているので、プロメテウス→コヴェナント→エイリアンというストーリーのつながりになります。
エイリアンは女性の妊娠から出産をモチーフにしていて、奇怪な姿の怪物は先端から精液をたらす男性の勃起したペニスであり、女性を妊娠させようとする男性の性欲の象徴であって、主役の賢くて強い女性は、それに対抗するフェミニズムを表現しているといわれています。
男に庇護される弱い女性ではなく、男性とも対等に渡り合って社会参加していく女性が当たり前になった今ではフェミニズムという言葉もあまり聞かれなくなりましたが、やはり映画は時代を映していると思います。

2017年9月21日 木曜日
2017年9月18日、月曜日、午後10時、NHK総合テレビで放送された「ありのままの最期 末期がんの看取り医師 死までの450日」を観ました。
末期がんの看取り医師とは、2016年6月30日にこのコーナーで取り上げた「いのちの苦しみは消える」の著者であり、医師で真言宗の僧侶でもある田中雅博先生です。田中先生は末期のすい臓がんで年単位の延命は難しいと診断されてからも、医師として、僧侶として、日本の医療からこぼれ落ちているスピリチュアルケアの必要性を説かれました。
番組は2017年3月21日に逝去された田中先生の闘病から、臨終、告別式までを追ったドキュメントです。「ここまで撮影していいかどうか、迷いました」とディレクターのナレーションが入るくらい、せん妄に苦しむ姿や、「早く眠らせてほしい(持続鎮静)」と妻にすがる姿、ベッド上で涙を流される姿、穏やかな死顔、火葬場でお骨になられた姿まで、まさに「ありのままの最後」が記録されていました。
ベッドサイドで遠慮しながら取材の可否をたずねるディレクターに「むしろ、聴いていただけてうれしいのです」と答えられた田中先生。
耐えがたい痛みの対応として持続鎮静や、心肺停止の際には蘇生措置を行わないなど、ちゃんと話し合って納得し、合意していたはずなのに、夫に一日でも長くと持続鎮静を先延ばしにし、最後の時には心臓に直接注射、胸骨圧迫も実施して死の淵から夫を救おうと必死になられた、妻であり医師の貞雅さん。
田中先生は、人は必ず命がなくなることに対する苦しみと直面する、その「いのちの苦しみ」から救われるには「自分への執着」すら捨て、どんな人生であったとしても、そこに価値があったと考えて「自分の人生の物語」を完結させるしかないと説かれましたが、そのためには他者とのかかわりが大切なことではないかと、番組を見て思いました。

2017年9月28日 木曜日
小説「ルビンの壺が割れた」の表紙
宿野かほるさんの小説「ルビンの壺が割れた」を読みました。
編集者の中瀬ゆかりさんがラジオで絶賛していたので調べてみたら、宿野さんは年齢も性別も明かさない作家で、本作は全文をネットで無料版として公開し、読者の反応を踏まえて更に推敲を重ねた正式版を書籍として発売したという前代未聞の経緯があることを知りました。
なんだか昔流行った「ビニール本」のような、どこか怪しげな雰囲気に魅かれページをめくると、表現方法が映像や音ではない、文章だからこその面白さが広がっており、ページをめくる指が止まらなくなりました。
ネタバレ厳禁と腰オビに書いてあるのでストーリーにはあまり触れられませんが、50過ぎの男が30年前に恋人だった女を偶然フェイスブックに見つけ、メールを送るところから物語は始まります。やがて返信があり、最初はおだやかな風景が徐々に変容を見せ始め、過去と現在が恐怖でつながるラストが待ち受けます。
秋の夜長、コーヒーと一緒にどうでしょうか。

Internet Explorer 8.0以降でご覧ください。