diary20200630 Diary:白山接骨院
2020年4月、5月、6月分の日記です。
2020年4月15日 水曜日
「50代からの人生戦略」の表紙
人間50才を超える頃には、親や友人、近しい人の死を経験して、その先にある自身の老いや死を考えるようになるものです。近頃は新型コロナウィルスのまん延がもたらす社会不安も重なって、閉塞感が増す社会がいつまで続くのか不安は尽きませんが、それでも死ぬまでは生きていかねばなりません。では、どうやって生きていけばいいのか?そんな思いにかられて知の巨人、佐藤優さんの著書「50代からの人生戦略」を読みました。
本書は、
第1章 50代からの「残り時間」
第2章 50代からの「働き方」
第3章 50代からの「職場の人間関係」
第4章 50代からの「お金」
第5章 50代からの「家族関係」
第6章 50代からの「自分磨き」
で構成され、一度立ち止まって働き方や人間関係、家族やお金について考えを整理することで、人生の残り時間を使い、できる限りの成果を上げながら、自分らしい生き方をするために必要な実践的アドバイスが書かれています。
佐藤さんは同志社大学神学部を卒業されたクリスチャンで、卓越した論理的思考のバックボーンには常にキリスト教があり、以前このコーナーでも紹介した、外科医でありホスピス医でもある細井順先生がそうであるように、身に着けた知識や教養というものを、他者の幸せのために使うことが豊かな人生には不可欠だと説きます。第5章の最後までそばにいてくれるのは誰か、第6章の自分の罪を棚に上げていないかというコンテンツがそれを象徴していたと思います。
”その時”に誰もそばにいてくれなかったとしても、それは自分が納得していれば受け入れることができると思いますが、自分を省みないというのは他者を傷つけてしまうこともあり、常に意識していたいことです。
知識を増やすのは簡単だけれども、教養を身に着けるのは難しいことを改めて思った一冊でした。

2020年4月22日 水曜日
「50代からの人生戦略」の表紙
政府が新型コロナウィルス特措法に基づく緊急事態宣言を全都道府県を対象にしてから1週間。世界規模の外出自粛要請により、2011年の東日本大震災の時以上に、世の中から活気が消えているように感じます。
一番望まれる治療薬やワクチンの開発も、複数の製薬企業が研究をしているようですが、治療薬として流通するには通常5年から10年はかかるようなので、私見ですが数年は現在のような生活が続くと思います。
こんな状況で私たち市民に最も必要なことは、信頼に足る情報を入手し、それをもとに考え、行動することだと思います。私は、厚労省、日本疫学学会のホームページにある情報を中心に、内科医の大津秀一先生による最新論文の解説なども参考にしています。テレビや雑誌からの情報は2次、3次情報になってしまい編集する人の主観(視聴率につながるようなセンセーショナルな表現が多い)が入って良質な情報源とは言えないと思います。
当院でも4月から来院されるすべての方を対象に、血圧や聴診以外に体温、サチュレーションを測定させていただいています。幸い今まで異常を認めた方はありませんが、TIA(一過性脳虚血発作)と思われる方を内科医に紹介して入院となった例は1例ありました。
感染症専門医の岩田健太郎さんは、安心安全という言葉があるけれども、安全はあっても安心はないと指摘します。つまり、安心とはリスクをとることを認めないことだというのです。医者が考える病気と、患者が感じている病気の違いを如実に表しているようにも思えますが、これから新型コロナウィルスとの長丁場、感染リスクを正しく理解して、最悪の状況にあっても最善の結果になるようにしていきたいものです。

2020年5月9日 土曜日
「むらさきのスカートの女」の表紙
今や邦画はオリジナル作品よりも、ベストセラー小説の映画化のほうが多い印象がありますが、すべての小説が映像化できるとは限らない、小説だからこそ、文章という表現方法だからこそ成立する作品があることを、今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」を読んで改めて思いました。
「むらさきのスカートの女」と名付けた女を、ストーカーのように観察する「私」の視点で語られていく物語で、むらさきのスカートの女と友達になりたい「私」は、自分と同じ職場で働くよう誘導したり、さまざまな企みを仕掛けていきます。読み進めていくうち、一人称で語られながら、なぜか三人称のようにすべてを見通す語りのように思えきて心がざわつきます。そもそも「私」と「むらさきのスカートの女」の関係性は「別人」なのか、「別人格」なのか。つまり「むらさきのスカートの女」と、語り手である「黄色のカーディガンの女」である「私」は本当に二人いるのかということ。読み方による解釈の揺らぎ、主観と客観の境い目は曖昧で、つかみどころのない浮遊感は映像化は不可能でしょう。
映画「キャリー1976年版」のラストシーンを思わせるような「五十嵐レイナのパンツ盗んだこと誰にも言いませんから」という一言は、ひずんだ人間関係が今後も繰り返されていくという暗示に思えました。

2020年5月15日 金曜日
風疹予防接種の案内
市役所から風疹の予防接種の案内が届きました。
1962年4月から1979年4月の間に生まれた男性は公的な接種を受けていない可能性があり、特に妊婦への感染防止の観点から抗体検査、予防接種を受けてほしいということです。
風疹は俗に「はしか」と呼ばれ、Cov-19同様、ウィルス感染症で飛沫、接触感染しますが基本再生産数5から7と感染力が強く、成人が感染した場合、子供に比べると重症化しやすい傾向があるようです。
2018年の夏以降、全国的に流行が広がっていますが、国立感染症研究所によると2019の患者数は1000人を超え2013年の大流行に次ぐものとなっており患者の8割は男性です。
はるか記憶をたどると受けてあるような気がするのですが、とりあえず抗体検査は受けようと思います。

2020年5月28日 木曜日
「怖い患者」の表紙
久坂部羊さんの短編集「怖い患者」を読みました。
いくつもの病院を渡り歩き、ドクターショッピングに走る若い女性を描いた「天罰あげる」。 他人の不幸に快感を覚えてしまう美貌の女医が売れっ子タレント医師になり、背徳の限りをつくす「蜜の味」。
過剰な健康志向の妊婦が、あらゆることに疑心暗鬼になり破綻していく「ご主人さまへ」。
心地よく利用者に過ごしてほしいと心を砕く介護施設で起きた予期せぬ争い「老人の園」。
薬の副作用を疑い始めた女性が一躍時の人となる「注目の的」。
現役医師でもある久坂部さんが描く作品は、どれも現実と地続きの物語を強烈にブラックに表現しています。読後感はいいとは言えないと思いますが、世の中、日の当たる場所があれば必ず影になる場所があるはずで、現実の厳しさや悲惨さを描いたものにも、それをエンターテインメントとして描いたものにも、ハッピーエンドで終わるもの以上に考えさせられるものがあり、意味があると思います。
一番印象に残ったのは「老人の園」で、病院に併設したデイサービスで医者もスタッフも誠心誠意に高齢者を診ています。しかし、うまくいくとは限らない。一生懸命やれば、笑顔でやれば報われるとよく言われるけれど、現実はうまくいかない。私は老人保健施設で働いた経験があるので、そのリアルさが怖かったです。

2020年5月31日 日曜日
抗体検査の結果
5月15日に受けた風疹の抗体検査の結果が出ました。HI法(赤血球凝集抑制法)による検査では抗体価により以下のように分類されます。
抗体価32倍以上・感染予防に十分な免疫を保有している。
抗体価8倍から16倍・免疫はあるが感染予防には不十分。
抗体価8倍未満・免疫なし。
私は8倍未満でした。よってワクチンの接種が必要です。しかし、現在ワクチンの供給不足で3カ月ほど待つことになりそうです。
抗体検査といえば新型コロナウィルスに対しても検査キットが供給されるようになり、一般市民に自由診療で実施している医療機関もあるようです。ならばこのキットを使って、B型肝炎やHIVのように献血をサンプルに市中感染率を調べたらどうかと思うのですが。

2020年6月10日 水曜日
次亜塩素酸水
写真は当院で使用している消毒薬です。向かって右から消毒用エタノール、消毒用イソプロパノール、次亜塩素酸水です。消毒盆にはクレゾールを使っています。Cov-19が流行する以前から身体消毒にはエタノール、器具消毒にはイソプロパノールを使っていましたが、スリッパや待合室のマガジンラック、花瓶までイソプロパノールでは経費的にきびしいので、写真のBSN新潟放送が宣伝、販売していた製造から1年が経過しても効果が変わらないという次亜塩素酸水「商品名:ジーミスト」を購入して使っていました。
ところが、経産省が実施した、新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験で、現時点において次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性は確認されていないという中間報告が出され、次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する消毒効果は否定されました。
新型コロナウイルスに関しては様々なフェイクニュースがあり、査読審査がある信頼度の高い医学雑誌に掲載された論文(プレプリントは除く)が根拠のもの以外は基本的に信用しないというスタンスでいましたが、どうやら引っ掛かってしまったようです。ただ、私の場合は学生の頃から微生物の実験で滅菌剤、殺菌剤の知識があったし、この前の登録販売者試験でも勉強したばかりだったのに情けないです。
ある、科学者がラジオで1+1は2が正解なんだけれども、3という人が大多数を占めると、3が正解になるのが世の中だと言っていましたが、それを実感しました。

2020年6月30日 火曜日
統計学について教えてください。
新型コロナウィルスの世界的流行から半年。連日メディアは、感染者数、死亡者数、感染者の年齢や、それらを地域別にまとめた統計データを報道しています。不思議なのは地域別の市中感染率が出ていないことです。一部の地域では抗体検査を使って調査したようですが、政治的判断には必要不可欠と思われる市中感染率を全国規模で実施しないのはなぜなのか知りたいです。
さて、メディアではこういった数値を出した後でコメンテーターと称する芸能人が意見を述べその場をまとめます。何も考えない視聴者は芸能人の主観も含めて、それが正しいことであると受け取ってしまうこともあると思うのですが、その数値が語っている事実を、予断や先入観にとらわれないで冷静に考えることが必要で、そのためには、ある程度、統計学の知識が要ります。そこで今回は小島寛之さんの新書「難しいことはわかりませんが、統計学について教えてください!」を紹介します。本書は、
第1章:平均値と標準偏差
第2章:標準化
第3章:正規分布
第4章:区間推定
第5章:仮説検定
第6章:相関関係
第7章:回帰分析
で構成され、観測されたデータから事実を発見する「記述統計」として標準偏差、標準化、相関関係を、予断や先入観にとらわれないために「推測統計」として区間推定、回帰係数のt値をザックリと知ることができ、例えば、平均値は複数のデータの代表ではあるけれども、それだけをみることは危険であることなど、物事の真相や実態を論理的に見出せる考え方が分かります。
数式はほとんど出てこないので数学が苦手という人にもおすすめです。医者は集団としての患者から得られたデータをもとに、目の前の患者に対して有効な治療法を考えますが、AI(人工知能)の基本的な考え方も統計と確率なので、それらを知る上でも統計学の概要を知ることは無駄ではないと思います。

2020年6月30日 火曜日
ラジオ
本日24時をもってFM-PORT(新潟県民エフエム)が経営上の理由から閉局しました。ネットワークに属さない独立系FM局として2000年に開局し、新潟文理高校野球部が夏の甲子園決勝戦に挑んだ暑い日も、中越地震で不安に包まれた寒い日も、19年6ヶ月にわたり、いつもリスナーに寄り添った楽しい放送を届けてくれました。先週で終了した”久米宏ラジオなんですけど”のように好きだった番組が終了することはありますが、放送局自体がなくなるという経験は初めてで、本当に残念だし悲しいです。
新潟県には全県をカバーするラジオ局がNHK、FM新潟、BSN、FM-PORTと4局あり、FM-PORTは少し落ち着きのある、入りやすい街の喫茶店といった感じで、番組ナビゲーターの個性を生かした放送が一番の魅力でした。中でも「モーニングゲート」を担当した遠藤麻里さんは、それが際立っていて、放送だけでなく文才もあり、著書「自望自棄、私がこうなった88の理由」は以前ここでも紹介しました。
ネットの情報によると、閉局を惜しむリスナーが、局が入っている新潟市万代のコズミックスビルの周囲に集まって「20年間ありがとう」と書かれた手作りの横断幕をかかげたり、有志で花火を打ち上げたりして別れを惜しんだようです。
ラジオから最後のコールサインが流れ「サー」というノイズ音に変わると、一斉に拍手が起ったそうです。
テレビやネットにはない、音声だけでつながるラジオ。やっぱりいいです。

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