2024年4月、5月、6月分の日記です
2024年4月16日 火曜日
「モリタク」の愛称で知られる経済アナリストの森永卓郎さん(66才)の著書「書いてはいけない 日本経済墜落の真相」を読みました。
森永さんは2023年末にステージ4の原発不明がんで、来年の桜を見るのは難しいと、主治医から告知を受けたことを公表しています。死ぬ前に、どうしても世に問うておきたいと、病床で渾身の力を込めて上梓した本書は発刊前に重版が決まり、現在14万部超えという異例のベストセラーとなっています。
本書は、森永さんが長年にわたる経済アナリストとしての活動の中で感じた、大手メディアでは「タブー」とされる3つの事柄、
1.ジャニーズ事務所の性加害問題
2.財務省のカルト的財政緊縮主義
3.日本航空123便の墜落事件
を通じて、絶対的権力者が、人権や人命や財産に関して行った深刻な侵害をメディアは報道せず、被害が拡大、長期化し、こうした事態について、警察も検察も見て見ぬふりをし、残酷な事態が社会に構造的に組み込まれてきたことを告発し、このことが1985年以降続く日本経済低迷の元凶になったと論じています。
ジャニーズ事務所の性加害問題はBBCにより白日の下にさらされ、その後の経過は周知のとおりです。
日本航空123便の墜落事件は、自衛隊の戦闘機による過失を政府(中曽根内閣)が隠ぺいし、アメリカも事実を知りながら、あえてボーイング社が泥を被る形で終息を図ったのではないかという仮説が、元日本航空CAが独自に調査したレポートなど、これまでにも複数ありました。森永さんはこの説に肯定的で、このことが、日本の経済政策にアメリカの意向が大きく反映されるようになった大きな要因であり、ここに財務省による必要以上の財政緊縮政策が加わって、かつては世界シェア20パーセントを誇った日本のGDPが、30年の間に4.2パーセントまで転落した直接的な原因であると論じています。
1945年敗戦
1948年帝銀事件
1949年下山事件
1951年サンフランシスコ平和条約締結
1976年ロッキード事件
1985年日本航空123便墜落事件
1985年プラザ合意
歴史を振り返ると、戦後間もない頃に起こった帝銀事件や下山事件は、当時GHQの統制下にあったこともあり、事件の背後にはアメリカ政府が関与していたという仮説は説得力があります。しかし、サンフランシスコ平和条約以降、日本は主権を回復した事になっているので、他国の政府が日本の経済政策を操ることなどありえないはずです。ただ、ロッキード事件で田中角栄元総理が失脚した背後にもアメリカ諜報機関の関与があったという説は根強くあり、森永さんの仮説には疑問が残ります。また、財務省は財政再建以外の選択肢を一切認めようとせず、経済成長よりも財政赤字の削減を優先し、日本経済はデフレに陥り、成長が停滞したと森永さんは主張されますが、いくら出世欲のためとはいえ、財務省の官僚が日本の国力を削ぐような政策をすすめるものでしょうか。
経済は難しく、森永さんは現状をデフレであるといいますが、経済学者はすでにインフレに入っているといい、何が最適解かわかりませんが、森永さんの指摘は、少なくとも財務省の財政政策に対して、国民が関心を持つきっかけにはなったと思います。
現在、吉野家の牛丼並盛は税込み448円。海外では1500円。経済学者は10年後には日本も1500円になり、日経平均株価は5万円を超えると予測しています。格差がさらに広がった世の中で、お金の価値が3分の1になった時、年金だけで生活できるのでしょうか。不安になります。
森永さんは2023年末にステージ4の原発不明がんで、来年の桜を見るのは難しいと、主治医から告知を受けたことを公表しています。死ぬ前に、どうしても世に問うておきたいと、病床で渾身の力を込めて上梓した本書は発刊前に重版が決まり、現在14万部超えという異例のベストセラーとなっています。
本書は、森永さんが長年にわたる経済アナリストとしての活動の中で感じた、大手メディアでは「タブー」とされる3つの事柄、
1.ジャニーズ事務所の性加害問題
2.財務省のカルト的財政緊縮主義
3.日本航空123便の墜落事件
を通じて、絶対的権力者が、人権や人命や財産に関して行った深刻な侵害をメディアは報道せず、被害が拡大、長期化し、こうした事態について、警察も検察も見て見ぬふりをし、残酷な事態が社会に構造的に組み込まれてきたことを告発し、このことが1985年以降続く日本経済低迷の元凶になったと論じています。
ジャニーズ事務所の性加害問題はBBCにより白日の下にさらされ、その後の経過は周知のとおりです。
日本航空123便の墜落事件は、自衛隊の戦闘機による過失を政府(中曽根内閣)が隠ぺいし、アメリカも事実を知りながら、あえてボーイング社が泥を被る形で終息を図ったのではないかという仮説が、元日本航空CAが独自に調査したレポートなど、これまでにも複数ありました。森永さんはこの説に肯定的で、このことが、日本の経済政策にアメリカの意向が大きく反映されるようになった大きな要因であり、ここに財務省による必要以上の財政緊縮政策が加わって、かつては世界シェア20パーセントを誇った日本のGDPが、30年の間に4.2パーセントまで転落した直接的な原因であると論じています。
1945年敗戦
1948年帝銀事件
1949年下山事件
1951年サンフランシスコ平和条約締結
1976年ロッキード事件
1985年日本航空123便墜落事件
1985年プラザ合意
歴史を振り返ると、戦後間もない頃に起こった帝銀事件や下山事件は、当時GHQの統制下にあったこともあり、事件の背後にはアメリカ政府が関与していたという仮説は説得力があります。しかし、サンフランシスコ平和条約以降、日本は主権を回復した事になっているので、他国の政府が日本の経済政策を操ることなどありえないはずです。ただ、ロッキード事件で田中角栄元総理が失脚した背後にもアメリカ諜報機関の関与があったという説は根強くあり、森永さんの仮説には疑問が残ります。また、財務省は財政再建以外の選択肢を一切認めようとせず、経済成長よりも財政赤字の削減を優先し、日本経済はデフレに陥り、成長が停滞したと森永さんは主張されますが、いくら出世欲のためとはいえ、財務省の官僚が日本の国力を削ぐような政策をすすめるものでしょうか。
経済は難しく、森永さんは現状をデフレであるといいますが、経済学者はすでにインフレに入っているといい、何が最適解かわかりませんが、森永さんの指摘は、少なくとも財務省の財政政策に対して、国民が関心を持つきっかけにはなったと思います。
現在、吉野家の牛丼並盛は税込み448円。海外では1500円。経済学者は10年後には日本も1500円になり、日経平均株価は5万円を超えると予測しています。格差がさらに広がった世の中で、お金の価値が3分の1になった時、年金だけで生活できるのでしょうか。不安になります。
2024年4月20日 土曜日
昨年公開された映画「シン・仮面ライダー」(石ノ森章太郎さん原作)の外伝的な物語「真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダーSHOCKERSIDE」。コミックとして現在4巻まで刊行されています。
本作は、仮面ライダーが登場する以前の物語で、SHOCKERという組織が生まれた背景と、その目的、組織が成長していく過程で起きた組織内対立を軸に、幸福とは何か、AIが人類にもたらす可能性などを、秀逸なストーリー展開で描いています。脚本担当の山田胡瓜さんは映画でも脚本を担当されており、映画との連続性も保たれていますが、オリジナルストーリーとして、仮面ライダーをまったく知らなくても楽しめる作品になっています。
一番の特色はSHOCKERという組織の新しい解釈で、石ノ森章太郎さんの原作では、人類の征服を目的とする悪の秘密結社ということになっていますが、本作では人類の幸福を希求することが目的となっており、絶対悪的な存在ではありません。
本作は、正義と悪の対立軸で描くのではなく、人間は属する場所が違ったり、境遇や抱えているものが違うと、時にすれちがい、お互いを傷つけてしまう「悲しさ」を持つことを、登場するキャラクターそれぞれに背負わせて描いています。
今、現実の世界では戦争が終わらず、SHOCKERの世界観と少し重なる状況になっています。また、世界レベルの問題だけでなく、身近なところでも、追い詰められた人が悲惨な事件を起こすということが少なからず起こっています。実は仮面ライダーはそういう社会の在り方と戦っているのかも知れません。
第5巻は2024年7月発売予定ですが、楽しみです。
本書の冒頭部分を公開しているサイト ヤングジャンプ
本作は、仮面ライダーが登場する以前の物語で、SHOCKERという組織が生まれた背景と、その目的、組織が成長していく過程で起きた組織内対立を軸に、幸福とは何か、AIが人類にもたらす可能性などを、秀逸なストーリー展開で描いています。脚本担当の山田胡瓜さんは映画でも脚本を担当されており、映画との連続性も保たれていますが、オリジナルストーリーとして、仮面ライダーをまったく知らなくても楽しめる作品になっています。
一番の特色はSHOCKERという組織の新しい解釈で、石ノ森章太郎さんの原作では、人類の征服を目的とする悪の秘密結社ということになっていますが、本作では人類の幸福を希求することが目的となっており、絶対悪的な存在ではありません。
本作は、正義と悪の対立軸で描くのではなく、人間は属する場所が違ったり、境遇や抱えているものが違うと、時にすれちがい、お互いを傷つけてしまう「悲しさ」を持つことを、登場するキャラクターそれぞれに背負わせて描いています。
今、現実の世界では戦争が終わらず、SHOCKERの世界観と少し重なる状況になっています。また、世界レベルの問題だけでなく、身近なところでも、追い詰められた人が悲惨な事件を起こすということが少なからず起こっています。実は仮面ライダーはそういう社会の在り方と戦っているのかも知れません。
第5巻は2024年7月発売予定ですが、楽しみです。
本書の冒頭部分を公開しているサイト ヤングジャンプ
2024年5月5日 日曜日
新潟市新津美術館において開催されている「ホキ美術館名品展 究極の超写実絵画」を鑑賞しました。
ホキ美術館は、2010年、世界で初めて写実絵画専門の美術館として千葉市にオープンしました。本展覧会はその所蔵品500点のコレクションの中から、現代日本の写実絵画を代表する有名作家をはじめ、第一線で活躍する人気作家の新作、中堅作家若手作家による渾身の作品など62点を厳選して紹介しています。
写真は三重野慶さんの2016年の作品「信じてる」です。絵画でありながら実物を見ているような、あるいは実物以上にリアリティを感じるような驚きを感じないでしょうか。
作家の野田弘志さんは、写実絵画とは物がそこに存在するということを描くことを通して、しっかりと確かめようとすること。物が存在するということのすべてを2次元の世界に描き切ろうという、一種無謀とみえる絵画制作のあり方。物がそこに在るということを見える通りに、聞こえる通りに、触れる通りに、匂う通りに、味のする通りに描き切ろうとする試みだと述べています。
写実絵画は写真のようですが、写真は単眼であり一点から見た画像です。でも、ヒトの眼は両眼であり視差により遠近を知覚します。なので、ヒトが見ている空間と写真が再現する空間は違うはずです。また、緻密に描かれるとともに、画家の想いや世界が表現されているところが写真とは決定的に違うのだと思います。
今回の展覧会で一番印象に残ったのは、石黒賢一郎さんの「Turn the dial in a counterclockwise direction」という作品です。以前、NHKで放送された全宇宙の謎を解く唯一無二の「神の数式」を追い求めた物理学者たちのドキュメンタリーで、実は「時間」は存在しないという説があるということを知りました。この作品を観たときに、なぜか、そのことと結びついて、過ぎ去った過去は消えたのではなく、実はいつもそこに在ることを、この作品の中に感じました。
ホキ美術館は、2010年、世界で初めて写実絵画専門の美術館として千葉市にオープンしました。本展覧会はその所蔵品500点のコレクションの中から、現代日本の写実絵画を代表する有名作家をはじめ、第一線で活躍する人気作家の新作、中堅作家若手作家による渾身の作品など62点を厳選して紹介しています。
写真は三重野慶さんの2016年の作品「信じてる」です。絵画でありながら実物を見ているような、あるいは実物以上にリアリティを感じるような驚きを感じないでしょうか。
作家の野田弘志さんは、写実絵画とは物がそこに存在するということを描くことを通して、しっかりと確かめようとすること。物が存在するということのすべてを2次元の世界に描き切ろうという、一種無謀とみえる絵画制作のあり方。物がそこに在るということを見える通りに、聞こえる通りに、触れる通りに、匂う通りに、味のする通りに描き切ろうとする試みだと述べています。
写実絵画は写真のようですが、写真は単眼であり一点から見た画像です。でも、ヒトの眼は両眼であり視差により遠近を知覚します。なので、ヒトが見ている空間と写真が再現する空間は違うはずです。また、緻密に描かれるとともに、画家の想いや世界が表現されているところが写真とは決定的に違うのだと思います。
今回の展覧会で一番印象に残ったのは、石黒賢一郎さんの「Turn the dial in a counterclockwise direction」という作品です。以前、NHKで放送された全宇宙の謎を解く唯一無二の「神の数式」を追い求めた物理学者たちのドキュメンタリーで、実は「時間」は存在しないという説があるということを知りました。この作品を観たときに、なぜか、そのことと結びついて、過ぎ去った過去は消えたのではなく、実はいつもそこに在ることを、この作品の中に感じました。
2024年5月9日 木曜日
アイスが美味しい季節になりました。
この時期、コンビニで新作アイスをチェックするのが楽しみなのですが、発見しました!「森永ピノ クリーミーチョコミント」チョコミント好きとしては即買いしました。
アイスはなめらかでミント強め、コーティングされたビターチョコのカカオ感とのハーモニーは最高です。期間限定商品ということなので、10箱くらい買いだめするつもりです。
ピノはひとつの箱に6個入っていますが、カップアイスをひとつ食べるよりも満足感が高いと感じるのは私だけでしょうか。
この時期、コンビニで新作アイスをチェックするのが楽しみなのですが、発見しました!「森永ピノ クリーミーチョコミント」チョコミント好きとしては即買いしました。
アイスはなめらかでミント強め、コーティングされたビターチョコのカカオ感とのハーモニーは最高です。期間限定商品ということなので、10箱くらい買いだめするつもりです。
ピノはひとつの箱に6個入っていますが、カップアイスをひとつ食べるよりも満足感が高いと感じるのは私だけでしょうか。
2024年5月19日 日曜日
ウェスボール監督作品「猿の惑星 キングダム」を観ました。
「猿の惑星」は、これまで幾度も映画化されたSF映画の金字塔です。原作はフランスの作家ピエールブールが1963年に発表したSF小説「猿の惑星」で、第二次世界大戦でピエールブールが日本軍の捕虜になった経験から着想したとされています。
本作は、2011年公開「猿の惑星 創世記」2014年公開「猿の惑星 新世紀」2017年公開「猿の惑星 聖戦記」に続くシリーズ第4作目となりますが、これまでのストリーを知らなくても楽しめる作品に仕上がっていました。
物語は西暦2000年代初頭、認知症の根治療法としてウイルスを利用した新薬が開発されるところから始まります。動物による治験で猿が高い知能を獲得し研究者は騒然としましたが、この薬は人間に対しては高い致死率を示しました。抗体を獲得出来た一部の人間を除き、大多数の人間が死亡したため、全世界規模で文明社会の崩壊が起こりました。第2作、第3作はここから続く人間と猿の争いを描いています。
本作は人間によって高い知能を獲得した第一世代の猿、シーザーから数世代後の世界が舞台となっています。高い知能と言語を得た多くの猿たちは、徹底的に人間を排除しようと、文明的なコミュニティを持った帝国を築こうとしていました。一方で人類は言語を失い、文化も技術も社会性もない、野生動物のような存在になっていました。
主人公の猿ノアは、独裁的なリーダーであるプロキシマス(シーザーの子孫)に、仲間と家族を奪われた若き猿です。彼は人間を一度も見たことがなく野生動物の一種という認識でしたが、人間の若い女性ノヴァと出会い、初めて本当の人間を知ります。彼はプロキシマスが作ろうとしている帝国に違和感を覚え、奪われた家族、仲間を助けるため行動にでますが、ノヴァと一緒にプロキシマスに捕まってしまいます。
さびついたタンカーの残骸に作った要塞に連れていかれ監禁されますが、ここで、実はノヴァが言葉を話す高い知性を持った人間であること、人間と猿の関係性に大きな影響をもたらす、ある重大な秘密を握っていることを知ります・・・。
物語序盤はノアとプロキシマスの対立、猿たちのストーリーが語られますが、ラストまでいくと人間たちも登場し、猿と人間の物語だったことを思い出します。
科学の誤用や慢心といった風刺や批判精神も高く評価されてきた「猿の惑星」シリーズですが、パンデミックによる社会秩序の崩壊、ジェノサイドや報復の連鎖といった要素を盛り込んだ今作は、今も世界中で起こっている悲惨な出来事を映し出しているようでした。
2024年2月に、中村文則さんの小説「列」を紹介しましたが、中村さんはこの作品のためにニホンザルに関する資料を相当読み込まれたとラジオで語っておられました。興味深かったのは、ニホンザルがリーダーをつくり集団として秩序を形成するのは、ヒトに飼われた猿の集団だけにみられる特徴であるという点です。
社会性を持つことは文明を築く第一歩であるのは間違いありませんが、「あたな」と「わたし」という関係性では大きな争いは起きないのに、「わたしたち」と「あなたたち」という関係性になると、時には皆殺しにまで至ってしまうのは、なぜなのでしょう。
「猿の惑星」は、これまで幾度も映画化されたSF映画の金字塔です。原作はフランスの作家ピエールブールが1963年に発表したSF小説「猿の惑星」で、第二次世界大戦でピエールブールが日本軍の捕虜になった経験から着想したとされています。
本作は、2011年公開「猿の惑星 創世記」2014年公開「猿の惑星 新世紀」2017年公開「猿の惑星 聖戦記」に続くシリーズ第4作目となりますが、これまでのストリーを知らなくても楽しめる作品に仕上がっていました。
物語は西暦2000年代初頭、認知症の根治療法としてウイルスを利用した新薬が開発されるところから始まります。動物による治験で猿が高い知能を獲得し研究者は騒然としましたが、この薬は人間に対しては高い致死率を示しました。抗体を獲得出来た一部の人間を除き、大多数の人間が死亡したため、全世界規模で文明社会の崩壊が起こりました。第2作、第3作はここから続く人間と猿の争いを描いています。
本作は人間によって高い知能を獲得した第一世代の猿、シーザーから数世代後の世界が舞台となっています。高い知能と言語を得た多くの猿たちは、徹底的に人間を排除しようと、文明的なコミュニティを持った帝国を築こうとしていました。一方で人類は言語を失い、文化も技術も社会性もない、野生動物のような存在になっていました。
主人公の猿ノアは、独裁的なリーダーであるプロキシマス(シーザーの子孫)に、仲間と家族を奪われた若き猿です。彼は人間を一度も見たことがなく野生動物の一種という認識でしたが、人間の若い女性ノヴァと出会い、初めて本当の人間を知ります。彼はプロキシマスが作ろうとしている帝国に違和感を覚え、奪われた家族、仲間を助けるため行動にでますが、ノヴァと一緒にプロキシマスに捕まってしまいます。
さびついたタンカーの残骸に作った要塞に連れていかれ監禁されますが、ここで、実はノヴァが言葉を話す高い知性を持った人間であること、人間と猿の関係性に大きな影響をもたらす、ある重大な秘密を握っていることを知ります・・・。
物語序盤はノアとプロキシマスの対立、猿たちのストーリーが語られますが、ラストまでいくと人間たちも登場し、猿と人間の物語だったことを思い出します。
科学の誤用や慢心といった風刺や批判精神も高く評価されてきた「猿の惑星」シリーズですが、パンデミックによる社会秩序の崩壊、ジェノサイドや報復の連鎖といった要素を盛り込んだ今作は、今も世界中で起こっている悲惨な出来事を映し出しているようでした。
2024年2月に、中村文則さんの小説「列」を紹介しましたが、中村さんはこの作品のためにニホンザルに関する資料を相当読み込まれたとラジオで語っておられました。興味深かったのは、ニホンザルがリーダーをつくり集団として秩序を形成するのは、ヒトに飼われた猿の集団だけにみられる特徴であるという点です。
社会性を持つことは文明を築く第一歩であるのは間違いありませんが、「あたな」と「わたし」という関係性では大きな争いは起きないのに、「わたしたち」と「あなたたち」という関係性になると、時には皆殺しにまで至ってしまうのは、なぜなのでしょう。
2024年5月31日 金曜日
島本理生さんの小説「憐憫」を読みました。
島本さんといえば恋愛小説ですが、本作は少し趣が違っていました。アダルトチルドレンという環境で育った主人公が、自身を映すかのような男との婚外恋愛の中で、思春期から自分を苦しめ続けている社会との関係性に気付き、そこから解放されていくという物語です。ただ、作品中にアダルトチルドレンという言葉は使われていないし、これは私的な感想です。
主人公は三枝沙良、27才、女優。
10代前半で芸能事務所に所属。彼女が稼いだお金はすべて家族の生活費や、伯父のギャンブルの尻ぬぐいに使われて、成人式に振袖を買うお金さえ残っていないことを知ったことから摂食障害を発症します。
4年間苦しみながら女優は続けたものの、ドラマの端役がたまにあるくらいで、家庭に入るほうが向いているかも知れないという思いから、8才年上でキー局のテレビディレクターと結婚します。
結婚当初よりセックスレスで、夫は仕事上の付き合いと称して、複数の若い女性タレントと肉体関係を持っていました。そのことを沙良は知っており、沙良も初めて会った男とセックスすることもありました。
物語は女友達に誘われた六本木のバーで、沙良が柏木という男と出会うところから始まります。「洪水のような憐憫がいっぺんにおしよせた。息もできないくらいに」沙良が柏木に出会った瞬間の心理描写です。
憐憫とは、かわいそうに思うこと、あわれむことですが、素性さえわからない男に、なぜ、沙良は憐憫を感じたのか・・・。
このように始まった恋愛が、どのように続いていくのか。あるいは、どのように別れることになるのか。読者は二人の関係性の変化に敏感になり、その敏感さが、物語の多様な解釈につながっていくのではないかと思いました。
恋愛は、付き合う相手が自分とは異なる価値観や内面を持っていることを痛感する経験です。それは同時に、自分が他者や社会に対して、様々なフィルターをかけて見ていることを知る経験でもあります。そこで得たある種の学びを、他の人間関係に生かすことで、自分を取り巻く環境を変えることができるかも知れない。これが恋愛を経験することの人生における価値ではないでしょうか。本書を読んで改めて思いました。
島本さんといえば恋愛小説ですが、本作は少し趣が違っていました。アダルトチルドレンという環境で育った主人公が、自身を映すかのような男との婚外恋愛の中で、思春期から自分を苦しめ続けている社会との関係性に気付き、そこから解放されていくという物語です。ただ、作品中にアダルトチルドレンという言葉は使われていないし、これは私的な感想です。
主人公は三枝沙良、27才、女優。
10代前半で芸能事務所に所属。彼女が稼いだお金はすべて家族の生活費や、伯父のギャンブルの尻ぬぐいに使われて、成人式に振袖を買うお金さえ残っていないことを知ったことから摂食障害を発症します。
4年間苦しみながら女優は続けたものの、ドラマの端役がたまにあるくらいで、家庭に入るほうが向いているかも知れないという思いから、8才年上でキー局のテレビディレクターと結婚します。
結婚当初よりセックスレスで、夫は仕事上の付き合いと称して、複数の若い女性タレントと肉体関係を持っていました。そのことを沙良は知っており、沙良も初めて会った男とセックスすることもありました。
物語は女友達に誘われた六本木のバーで、沙良が柏木という男と出会うところから始まります。「洪水のような憐憫がいっぺんにおしよせた。息もできないくらいに」沙良が柏木に出会った瞬間の心理描写です。
憐憫とは、かわいそうに思うこと、あわれむことですが、素性さえわからない男に、なぜ、沙良は憐憫を感じたのか・・・。
このように始まった恋愛が、どのように続いていくのか。あるいは、どのように別れることになるのか。読者は二人の関係性の変化に敏感になり、その敏感さが、物語の多様な解釈につながっていくのではないかと思いました。
恋愛は、付き合う相手が自分とは異なる価値観や内面を持っていることを痛感する経験です。それは同時に、自分が他者や社会に対して、様々なフィルターをかけて見ていることを知る経験でもあります。そこで得たある種の学びを、他の人間関係に生かすことで、自分を取り巻く環境を変えることができるかも知れない。これが恋愛を経験することの人生における価値ではないでしょうか。本書を読んで改めて思いました。
2024年6月5日 水曜日
写真は「ガリガリ君」で有名な赤城乳業株式会社のチョコミントアイスです。近所のスーパーで見つけました。知人の話だと随分前から売っていたようですが、チョコミン党の私としては不覚にも知りませんでした。
カップアイスののですが、カップの側面がビターチョコレートでコーティングされており、カップを内側に押し込むことによって、カップからパリッパリッとチョコがはがれ、それをスプーンでさらに砕いてミントアイスと混ぜて食べることができる、つまり、食感を自分でコントロールすることができるという、今までなかった画期的なアイディアが搭載されています。
私的には、もう少しミント感があるほうがいいと感じました。
カップアイスののですが、カップの側面がビターチョコレートでコーティングされており、カップを内側に押し込むことによって、カップからパリッパリッとチョコがはがれ、それをスプーンでさらに砕いてミントアイスと混ぜて食べることができる、つまり、食感を自分でコントロールすることができるという、今までなかった画期的なアイディアが搭載されています。
私的には、もう少しミント感があるほうがいいと感じました。
2024年6月9日 日曜日
関根光才(せきね こうさい)監督作品「かくしごと」を観ました。原作は北國浩二さんの小説「嘘」です。
子供を守りたい母親の強烈な愛と嘘を描いたミステリー仕立ての作品ではありますが、2018年公開の是枝裕和監督作品「万引き家族」2020年公開の河瀬直美監督作品「朝が来る」にも通ずる、血のつながらない家族の再生物語でもあります。ラストシーンの少年の一言と、それを受け止める主人公の表情に涙腺崩壊しました。
主人公は絵本作家のチサコ。チサコは前夫との間に男の子が一人ありましたが、夫の友人家族と海水浴に行き、波にさらわれて亡くなっていました。子供から目を離さないように頼んでおいたのに、ビールを飲んで談笑していた夫が許せず離婚。
田舎の実家には父親が一人暮らしをしていましたが、喪失感から立ち直れないチサコに、できちゃった婚のあげく、子供を死なせてしまった無責任を責める言葉を浴びせられたことから連絡すらしなくなり、数年が経っていました。
物語は、田舎の市役所で福祉を担当している旧友のヒサエから、父がアルツハイマー型認知症を発症して問題行動を起こしていると連絡があり、チサコが渋々帰郷するところから始まります。
チサコの顔を見ても他人としか認識できていない様子の父に愕然とするチサコでしたが、ヒサエと相談して入れる施設が決まれば早々に東京に帰るつもりでした。
数日後、ヒサエと居酒屋で飲んだ帰りのこと、代行が混んでいてヒサエは自分の車で帰ると言い出します。ジョッキ2杯くらいなら飲んだうちに入らないし、田舎の道だから大丈夫という言葉に負けてチサコも同乗してしまいます。
しばらく走ると何かに当たった衝撃に二人は顔を見合わせ、慌てて降りてみると小学生くらいの少年が倒れていました。
救急車を呼ぼうとするチサコに、「わたしは市役所職員、警察に捕まったら、子供はどうなる?お願い、見逃して」とシングルマザーのヒサエは懇願します。 しかし、このまま少年を放置すれば、警察がヒサエにたどり着くのは必至ということで、とりあえずチサコの実家に運んで様子をみようということになりました。
少年を車に乗せようとして、チサコは奇妙なことに気付きます。なぜか少年の足にはロープが結ばれていました。
少年を横たえ体の状態を確認するために服をめくると、ほぼ全身にアザや傷があり、さっきの事故が原因とは思えない、どう見ても虐待の痕跡だとヒサエは言いました。
翌朝、少年は目覚め、チサコが「どこか痛いところない?気持ち悪くない?」と聞くと首を横に振り、食事もとることができました。ただ、昨夜のことも含め、なぜか記憶を失くしている様子で、自分の名前すら答えられませんでした。
その日、テレビのワイドショーでは、東京から両親と川遊びに来ていた少年が行方不明になっており、両親によると、少年はバンジージャンプをしたいと言い出し、母親は止めたのだけれども、父親の車に積んであったロープが無くなっていることから、ひとりで橋から飛び降りたのではないかと推測されていると、チサコが見慣れた風景と共に伝えていました。
ヒサエは少年の記憶が曖昧な今なら、たまたま倒れていた少年を介抱しただけ、自分たちは善意の第三者で通せるから通報しようと言います。しかし、チサコは少年に、自分が母で、ここはあなたの家、あなたの名前はタクミ(チサコの絵本に登場する少年の名)だと教え、一緒に暮らすと宣言します。
認知症が進む父と3人で、最初はぎこちないながらも次第に心を通わせ、新しい家族のかたちを育んでいくチサコたちでしたが、幸せは長く続きませんでした・・・。
認知症の父親と記憶を失った少年という、一見バラバラな3人が、嘘という絆で結ばれ、疑似家族として再生していく様子はとても暖かく感じられました。また、DV、虐待、介護、親子関係など、現代日本が内包する問題が、登場人物それぞれが抱える心の傷として、ていねいに描かれた作品でした。
子供を守りたい母親の強烈な愛と嘘を描いたミステリー仕立ての作品ではありますが、2018年公開の是枝裕和監督作品「万引き家族」2020年公開の河瀬直美監督作品「朝が来る」にも通ずる、血のつながらない家族の再生物語でもあります。ラストシーンの少年の一言と、それを受け止める主人公の表情に涙腺崩壊しました。
主人公は絵本作家のチサコ。チサコは前夫との間に男の子が一人ありましたが、夫の友人家族と海水浴に行き、波にさらわれて亡くなっていました。子供から目を離さないように頼んでおいたのに、ビールを飲んで談笑していた夫が許せず離婚。
田舎の実家には父親が一人暮らしをしていましたが、喪失感から立ち直れないチサコに、できちゃった婚のあげく、子供を死なせてしまった無責任を責める言葉を浴びせられたことから連絡すらしなくなり、数年が経っていました。
物語は、田舎の市役所で福祉を担当している旧友のヒサエから、父がアルツハイマー型認知症を発症して問題行動を起こしていると連絡があり、チサコが渋々帰郷するところから始まります。
チサコの顔を見ても他人としか認識できていない様子の父に愕然とするチサコでしたが、ヒサエと相談して入れる施設が決まれば早々に東京に帰るつもりでした。
数日後、ヒサエと居酒屋で飲んだ帰りのこと、代行が混んでいてヒサエは自分の車で帰ると言い出します。ジョッキ2杯くらいなら飲んだうちに入らないし、田舎の道だから大丈夫という言葉に負けてチサコも同乗してしまいます。
しばらく走ると何かに当たった衝撃に二人は顔を見合わせ、慌てて降りてみると小学生くらいの少年が倒れていました。
救急車を呼ぼうとするチサコに、「わたしは市役所職員、警察に捕まったら、子供はどうなる?お願い、見逃して」とシングルマザーのヒサエは懇願します。 しかし、このまま少年を放置すれば、警察がヒサエにたどり着くのは必至ということで、とりあえずチサコの実家に運んで様子をみようということになりました。
少年を車に乗せようとして、チサコは奇妙なことに気付きます。なぜか少年の足にはロープが結ばれていました。
少年を横たえ体の状態を確認するために服をめくると、ほぼ全身にアザや傷があり、さっきの事故が原因とは思えない、どう見ても虐待の痕跡だとヒサエは言いました。
翌朝、少年は目覚め、チサコが「どこか痛いところない?気持ち悪くない?」と聞くと首を横に振り、食事もとることができました。ただ、昨夜のことも含め、なぜか記憶を失くしている様子で、自分の名前すら答えられませんでした。
その日、テレビのワイドショーでは、東京から両親と川遊びに来ていた少年が行方不明になっており、両親によると、少年はバンジージャンプをしたいと言い出し、母親は止めたのだけれども、父親の車に積んであったロープが無くなっていることから、ひとりで橋から飛び降りたのではないかと推測されていると、チサコが見慣れた風景と共に伝えていました。
ヒサエは少年の記憶が曖昧な今なら、たまたま倒れていた少年を介抱しただけ、自分たちは善意の第三者で通せるから通報しようと言います。しかし、チサコは少年に、自分が母で、ここはあなたの家、あなたの名前はタクミ(チサコの絵本に登場する少年の名)だと教え、一緒に暮らすと宣言します。
認知症が進む父と3人で、最初はぎこちないながらも次第に心を通わせ、新しい家族のかたちを育んでいくチサコたちでしたが、幸せは長く続きませんでした・・・。
認知症の父親と記憶を失った少年という、一見バラバラな3人が、嘘という絆で結ばれ、疑似家族として再生していく様子はとても暖かく感じられました。また、DV、虐待、介護、親子関係など、現代日本が内包する問題が、登場人物それぞれが抱える心の傷として、ていねいに描かれた作品でした。
2024年6月22日 土曜日
NHKの「チコちゃんに叱られる」のファンで必ず見ています。2024年5月17日の放送で「走るときに腕を振ってしまうのはなぜ?」という問題がありました。私は答えを知っていましたが、走るという動作時の肩甲帯と骨盤の関係性をハンガー2つで表現した解説はわかりやすく感心しました。
こういった、骨や筋肉の種類と動き、関節の仕組みと動き、また、筋肉がどのような順番で力を発揮しているのか、どのような関節角度の時最も力が発揮できるのかといった、身体を動かす仕組みを解明していく分野を機能解剖といい、学校では最初にヒトの正常な歩行を例に学びます。
今回紹介する大山 卞 圭悟著「アスリートのための解剖学 アドバンス編」は、スポーツにかかわる人達を対象に機能解剖を分かりやすく解説した内容です。医療者向けの専門書ではありませんが、筋肉の生理学的な特性や筋腱周辺の細やかな構造に関する解説、体幹から上肢に関するトピックス、そして各部位間の仕組みと動きのつながりに注目した「キネティックチェーン」についても、わかりやすい解説がされています。更にストレッチングやテーピングといったコンディショニング手技についても触れており、充実した内容になっています。ただ、アドバンス編とあるように、ある程度、解剖を知っていないと十分に理解できないかも知れません。
著者は私と同世代らしく、ストレッチングではボブアンダーソン、ブックハウスHDという名前が出てきて懐かしかったです。40年前、静的ストレッチについては1部位1分が基準で、練習前にやることが推奨されていましたが、現在は練習後のクールダウンに1部位30秒が推奨されています。
この分野では普遍的なことはあまりなく、常に最新の知見を学習する姿勢が必要です。2009年にトーマスマイヤースが身体全体にわたる筋膜と筋筋膜のコネクション解剖学を提供した、アナトミートレインという考え方は全世界で支持され、本書でとりあげているキネティックチェーンの基礎でもありますが、この考え方を初めて知った時は衝撃的でした。
本書は最新の知見を臨床で使えるように工夫された良書です。
こういった、骨や筋肉の種類と動き、関節の仕組みと動き、また、筋肉がどのような順番で力を発揮しているのか、どのような関節角度の時最も力が発揮できるのかといった、身体を動かす仕組みを解明していく分野を機能解剖といい、学校では最初にヒトの正常な歩行を例に学びます。
今回紹介する大山 卞 圭悟著「アスリートのための解剖学 アドバンス編」は、スポーツにかかわる人達を対象に機能解剖を分かりやすく解説した内容です。医療者向けの専門書ではありませんが、筋肉の生理学的な特性や筋腱周辺の細やかな構造に関する解説、体幹から上肢に関するトピックス、そして各部位間の仕組みと動きのつながりに注目した「キネティックチェーン」についても、わかりやすい解説がされています。更にストレッチングやテーピングといったコンディショニング手技についても触れており、充実した内容になっています。ただ、アドバンス編とあるように、ある程度、解剖を知っていないと十分に理解できないかも知れません。
著者は私と同世代らしく、ストレッチングではボブアンダーソン、ブックハウスHDという名前が出てきて懐かしかったです。40年前、静的ストレッチについては1部位1分が基準で、練習前にやることが推奨されていましたが、現在は練習後のクールダウンに1部位30秒が推奨されています。
この分野では普遍的なことはあまりなく、常に最新の知見を学習する姿勢が必要です。2009年にトーマスマイヤースが身体全体にわたる筋膜と筋筋膜のコネクション解剖学を提供した、アナトミートレインという考え方は全世界で支持され、本書でとりあげているキネティックチェーンの基礎でもありますが、この考え方を初めて知った時は衝撃的でした。
本書は最新の知見を臨床で使えるように工夫された良書です。
2024年6月29日 土曜日
南直哉(みなみ じきさい)さんの著書「苦しくて切ないすべての人たちへ」を読みました。
南さんを知ったのはつい最近で、ゲスト出演されていた文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」を聴いて、南さんが曹洞宗(禅宗)の僧侶であることを知りました。私が敬愛する良寛さんも曹洞宗、私の菩提寺も曹洞宗であり仏教に関心もあるので、番組中で紹介された本書はぜひ読みたいと手に取りました。
本書は南さんが考える仏教を体験で語る、自伝的エッセイです。なので、学問的体系的に高い位置から神様目線で人生を説くような思想書、哲学書とは違い、具体的な著者の体験、エピソードをつないで語っているので親しみやすく、仏教が心にしみてくる、そんな印象を持ちました。
南さんが住職を務める福井市の曹洞宗霊泉寺で、ある日の夕方、境内の落ち葉を掃いていた時のエピソード。
「僕、なんでここにいるんですか?」。5歳くらいの男児に突然、後ろから声を掛けられた。幼い顔立ちに似合わず視線は鋭い。直立して両手の拳を握り締めている。「お母さんが連れてきてくれたからでしょ」なんて、その場しのぎの答えは通用しない。覚悟を決めて語って聞かせた。
「君の言ったこと、和尚さんも世界中の偉い人たちも考えてきたけど分からない」「君も頑張って、いつか分かったら和尚さんに教えてほしい」
このエピソードにあるように、僧侶といえど迷いを離れた安らぎの境地にはなく、修行の「過程」に意味があると自らに言い聞かせ、座禅に打ち込む。それでも「仏教は苦しくて切ない人たちのためにあるはず」と南さんは説きます。
そもそも、人間は自分の意思で生まれたわけではない。生きなければならない確かな意味も理由もない。出世したい、金持ちになりたい、周囲に触発されて抱く「お仕着せの夢」で心の隙間を埋め合わせ、その夢が破れると、生きる意味を見失って苦しむ。ならば、最初から人生の土台に意味はなく、無駄な時間がある事実を受け入れてはどうか。あきらめがついた時、自分にとって大切なことや大事な他者が見えてくる。また、人間が自分の意思で生まれたのではないなら、責任もないはず。自分なりに頑張っても対応できないことは他者に助けを求めるのは当然で何ら恥じ入ることではないと、弱者にも「自己責任」を強いる現代社会の風潮を批判します。
「大竹まことゴールデンラジオ」ゲスト南直哉さんのインタビュー音源がYouTubeにアップされていたのでリンクを貼っておきます。 仏教に関心がなくても、聴けば心が軽くなると思います。
南直哉YouTube音源
南さんを知ったのはつい最近で、ゲスト出演されていた文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」を聴いて、南さんが曹洞宗(禅宗)の僧侶であることを知りました。私が敬愛する良寛さんも曹洞宗、私の菩提寺も曹洞宗であり仏教に関心もあるので、番組中で紹介された本書はぜひ読みたいと手に取りました。
本書は南さんが考える仏教を体験で語る、自伝的エッセイです。なので、学問的体系的に高い位置から神様目線で人生を説くような思想書、哲学書とは違い、具体的な著者の体験、エピソードをつないで語っているので親しみやすく、仏教が心にしみてくる、そんな印象を持ちました。
南さんが住職を務める福井市の曹洞宗霊泉寺で、ある日の夕方、境内の落ち葉を掃いていた時のエピソード。
「僕、なんでここにいるんですか?」。5歳くらいの男児に突然、後ろから声を掛けられた。幼い顔立ちに似合わず視線は鋭い。直立して両手の拳を握り締めている。「お母さんが連れてきてくれたからでしょ」なんて、その場しのぎの答えは通用しない。覚悟を決めて語って聞かせた。
「君の言ったこと、和尚さんも世界中の偉い人たちも考えてきたけど分からない」「君も頑張って、いつか分かったら和尚さんに教えてほしい」
このエピソードにあるように、僧侶といえど迷いを離れた安らぎの境地にはなく、修行の「過程」に意味があると自らに言い聞かせ、座禅に打ち込む。それでも「仏教は苦しくて切ない人たちのためにあるはず」と南さんは説きます。
そもそも、人間は自分の意思で生まれたわけではない。生きなければならない確かな意味も理由もない。出世したい、金持ちになりたい、周囲に触発されて抱く「お仕着せの夢」で心の隙間を埋め合わせ、その夢が破れると、生きる意味を見失って苦しむ。ならば、最初から人生の土台に意味はなく、無駄な時間がある事実を受け入れてはどうか。あきらめがついた時、自分にとって大切なことや大事な他者が見えてくる。また、人間が自分の意思で生まれたのではないなら、責任もないはず。自分なりに頑張っても対応できないことは他者に助けを求めるのは当然で何ら恥じ入ることではないと、弱者にも「自己責任」を強いる現代社会の風潮を批判します。
「大竹まことゴールデンラジオ」ゲスト南直哉さんのインタビュー音源がYouTubeにアップされていたのでリンクを貼っておきます。 仏教に関心がなくても、聴けば心が軽くなると思います。
南直哉YouTube音源
2024年6月30日 日曜日
今日は児童公園の除草剤散布と、ホタルロード(遊歩道)の草刈りでした。梅雨時で空模様が一番心配でしたが、作業中は降らなかったのでよかったです。
この日は、作業前に地域の民生委員の方二人から、現在、民生委員が個人負担している協議費15,600円について、町内会で負担してはどうかという提案と趣旨説明がありました。私の住む地域では、
a)白山1丁目・2丁目
b)白山3丁目・4丁目
c)白山5丁目・6丁目・本条地区・緑ヶ丘1丁目・2丁目
という区分で、民生委員各1名(計3名)が選出されています。町内役員や民生委員を選出するのは大変で、引き受けて下さった方に金銭の負担を負わせるべきでなく、町内会が負担するのは当然だと思います。また、私が住む5丁目は範囲が広すぎて1人で担当するのは無理があります。行政に相談して分離するべきだと考えます。
実は、この件については先代の町内会長さんの時代に、当時の民生委員から申し入れがされており、棚上げ状態で現在に至っていることが後日、わかりました。
作業は7人で2時間ほどで終了。日当2千円をいただき、帰りました。
この日は、作業前に地域の民生委員の方二人から、現在、民生委員が個人負担している協議費15,600円について、町内会で負担してはどうかという提案と趣旨説明がありました。私の住む地域では、
a)白山1丁目・2丁目
b)白山3丁目・4丁目
c)白山5丁目・6丁目・本条地区・緑ヶ丘1丁目・2丁目
という区分で、民生委員各1名(計3名)が選出されています。町内役員や民生委員を選出するのは大変で、引き受けて下さった方に金銭の負担を負わせるべきでなく、町内会が負担するのは当然だと思います。また、私が住む5丁目は範囲が広すぎて1人で担当するのは無理があります。行政に相談して分離するべきだと考えます。
実は、この件については先代の町内会長さんの時代に、当時の民生委員から申し入れがされており、棚上げ状態で現在に至っていることが後日、わかりました。
作業は7人で2時間ほどで終了。日当2千円をいただき、帰りました。